朴念仁の戯言

弁膜症を経て

2020-01-01から1年間の記事一覧

世界の、人類の変わり目に

間もなく今年が終わる。 感慨深く振り返りもするが、時間の概念なぞ人間が考えたもので今年も来年もない。 今しかない。 今あるだけ。 その連続の最中に何もかにもが存在している。 日常の無常さを、コロナで全世界の人類が否が応でも共有させられた一年。 …

The Wheel of Life 6

第10章 蝶の謎⑵ 収容所が解放され、門があけられたとき、ゴルタは怒りと悲しみのきわみで麻痺状態におちいっていた。せっかくの貴重な人生を憎しみの血へどを吐きながらすごすことが虚しく思えてきた。「ヒトラーと同じだわ」とゴルタがいった。「せっかく救…

The Wheel of Life 5 

第10章 蝶の謎 ⑴ 蝶だった。 みると、いたるところに蝶が描かれていた。稚拙な絵もあった。細密に描かれたものもあった。マイダネック、ブーヘンヴァルト、ダッハウのようなおぞましい場所と蝶のイメージがそぐわないように思われた。しかし、建物は蝶だらけ…

The Wheel of Life 4

第3章 瀕死の天使 金魚鉢にはもうひとつベッドがあった。そこにはわたしより2歳年長の少女が横たわっていた。いかにもひ弱な感じで肌が青ざめ、透きとおっているようにみえた。翼のない天使、磁器でできた小さな天使を思わせた。その子を見舞う人はいなかっ…

The Wheel of Life 3

第2章 さなぎ どんな人にも守護霊または守護天使がついていると、私は信じている。 霊や天使は人間の生から死への移行に手を貸し、生まれるまえに両親選びを助けてくれているのだ。

The Wheel of Life 2

第1章 偶然はない 両親の推測によると、わたしはまじめに教会に通う、しとやかなスイスの主婦になるはずだった。 ところが、いざ蓋をあけてみると、なんとアメリカは南西部に居を定め、この世よりははるかにすばらしく荘厳な世界の霊たちと交信する、依怙地…

The Wheel of Life 1

エピグラフより。 地球に生まれてきて、あたえられた宿題をぜんぶすませたら、もう、からだをぬぎ捨ててもいいのよ。 からだはそこから蝶が飛び立つさなぎみたいに、たましいをつつんでいる殻なの。 ときがきたら、からだをてばなしてもいいわ。 そしたら、…

The Wheel of Life

弁膜症の初期症状が表れ、初めてカテーテル検査を受けた十数年前。 その後、月一の割合で通院し、診察ついでに栄養指導を受けるようになった。 その日、指定の時刻に栄養指導室に出向くと、担当の栄養士は入院患者の指導で不在だった。 別の栄養士が「検尿し…

同じ人間なのに

母国を追われ、レバノンに逃げてきたシリアの人たち。 ベッドに横たわる年若い男性。 癌になった母親の治療のため自分の腎臓を売った息子。 術後のまだ痛みが続く左脇腹の、斜めに走る30㎝ほどの手術痕を見せ、「母の治療のためだから(臓器売買を)後悔して…

定年後の生き方

数年後に定年を迎える。 漠然と定年後の人生を考える。 定年後の75歳までを「黄金の15年」と言うらしい。 思い描いた、理想通りの素敵な生活を送ることができるなら黄金色にもなるだろうが、他人より秀でた才能、才覚もなく、また、何ら努力もしていない私に…

カレーライス

昨晩、うんこカレーを喰わされた。 父方の伯母が作った。 うんこカレーは丼ぶりに山のように盛られ、手にした時、その重さにたじろいだ。 丼ぶりを受け取った私を、伯母の甥や姪なのか、それとも孫なのかよく分からないが、何人もの子どもたちが取り巻いてい…

墓を参りて

先日、仕事で先人の墓地の管理状況を確認し、写真に収めることになった。 思い立ったら吉日と、よくよく天気の確認もせず、翌日の昼前後に出向くことに決めた。 その日、梅雨明けの酷暑に閉口しながら、この町の聖域の一つと言われる墓地を目指した。 駐車場…

自滅の道から

疫病蔓延、大規模水害、爆発事故・・・。 連日、映画のような世界が繰り広げられている。 いよいよ次は地球外生命体による地球侵略か。 近年における想定外の出来事が、最近そんな馬鹿げたことを思わせる。 映画の見過ぎか。 想定外という言葉は、確かホリエモ…

痛みも喜びも分かち合う

「経済とは本来、共に生き死にを分かち合う仲間が幸せに生きる条件を整えるもの」 「相互扶助や再分配の経済をつくり直し、皆で痛みも喜びも分かち合える社会を取り戻さなくてはいけない」 ※「欲望の経済を終わらせる」の著者・井出栄策さん 昨年、母と叔母…

後ろ髪

「行ってきます」「車の運転に気を付けるんだよ」 出勤時の私と母のいつものやりとり。母は必ず玄関先に出て私を見送る。母の視線を背に受け、私は「分かったよ」と返事をする代わりに片手を上げて車に乗り込む。いつもの光景。 この一瞬に想う。別離と公私…

慈しみの心

先日、職場で不織布マスクを確保しておこうという話になり、ネットで1,000枚注文した。それに便乗して、同僚皆で私用に追加注文した。世界的需要の多さから割高ではあったが、我が身、家族を守るためであればケチ臭いことは言っていられない。 昨日、テレビ…

7歳の誕生日に

一度死んで、また生まれることができて、昨日、小学一年生になった。間もなく国内の都市部では緊急事態宣言が発令されるだろう。 最近読んだ本で合点がいった。地球生命の理想的環境は大きな痛みが伴わないと為されないことを。理想的環境の出現は今から600…

今生の学び

先日、母のリハビリの帰りに近くの道の駅に寄った。昼頃を大分過ぎていたが、弁当を買うついでに夕飯のカレーの食材も買おうと野菜館を物色していた。すると、すぐ後ろを歩いていた母が急に咳き込み始めた。母のバッグからマグボトルを取り出し、「コロナ騒…

見えないもの

新型ウイルスは見えない。この見えないものに今人類は翻弄されている。 人の気持ちもそうだ。意識して見ようとすればかろうじて目の動き、顔の表情、仕種で読むこともできるが、完全ではない。 新型ウイルスは、「見えないもの」の存在を病状という形で姿を…

新型コロナウイルス感染拡大の意味するもの

新型コロナウイルスの広がりは社会に未知なる不安を齎しているが、地球には一時の優しい処方箋だろう。世界経済が足止めを喰えば二酸化炭素の排出も抑えられ、交流人口も少なくなり、交通機関の使用も限られる。地球にようやく訪れた一時の安息。調子に乗る…

沈黙を破る

「コルタン(タンタル)」という名を最近知った。ICT産業が世界を席巻するようになって、この鉱物資源の需要が増し、これが産出国の紛争とおぞましい性暴力を招く結果になったことも。世界で使用されるコルタンの約80%がコンゴ民主共和国のものだという。コ…

稲葉耶季さんの遺言

「いまを生きる16の知恵」生きることは楽しいこと、大きな意味のあることです。 ①川の水のように自然の流れに沿う②自分の中のかすかな息吹を感じる繊細さを持つ③他者と同じ息吹の中で生きていることを感じる④興味のあることに集中する⑤不安や恐怖を持たない⑥…

年頭に想う

新年だ。年の区切りとして目出度いことなのだろうが、これも人間界の出来事であって、自然界は何ら変わりなく、過ぎ行く時の概念も人間だけのものであって、自然界はただ「今」あるだけ。人間も肉を脱ぎ捨てれば、過去も現在も未来もなく、「今」あるだけの…