朴念仁の戯言

弁膜症を経て

2018-11-01から1ヶ月間の記事一覧

「大人とは話さない」

小学生が障害者家庭背負う 呼び鈴を鳴らして家に入ると、刃物を持った少年が大声を上げて襲いかかってきた。「大人とは話さない。全員死ね!」今から数年前、学習支援で中通りの家を訪問した支援団体の女性担当者は、当時、小学生だった和也=仮名=との出会…

理屈優先の社会に限界

幼少期から昆虫採集に親しみ、医学部に進んだものの「(医療過誤で)人を殺さずに済む」との理由で解剖学者の道を選んだ養老孟司さん。「命とは何か」「幸福とは何か」を常に問い続けた人だ。かねて、日本よりも経済的に豊かではないブータン人が大切にする…

命より大切な仕事ない

古都の紅葉も終盤の昨年12月3日。京都市北区の私立洛星高校で、寺西笑子さん(67)が1年生約220人に特別な授業をした。寺西さんは「全国過労死を考える家族の会」の代表を務めている。「夫が49歳で亡くなったとき、私は47歳、長男20歳、次男14歳。皆さんの中…

生死さまよう中 夢で救った恩人

以前、体調を崩し、大変苦しい思いをしたことがありました。部屋のベッドで休んでいた時のことだと記憶しています。まさに生死の境をさまよう状態でした。その時、枕元に幻影が立ったのです。私の頭の後ろを両手で抱きかかえるようにして、私の名を何度も何…

少年時代の思いが原点

自由な発想と色使い、思わずクスッと笑ってしまう物語が魅力の絵本作家・五味太郎さん。なりたかったわけではない70歳を過ぎ、「気がついたら絵本しかやってないな」と顧みる。この「自分に合う表現の仕方」に出会ってから40年を超えた。 最近、作家としての…

安心のできる場所を

黒川祥子著「誕生日を知らない女の子」 毎年、多くの子どもが虐待によって命を奪われる。そんな報道を見聞きするたびに私たちの胸は痛むが、「殺されずにすんだ」子どもたちのことを知る機会は、ほぼない。 集英社から刊行された本書は、児童相談所に保護さ…

法を守って安全な世界を

最近、世界各地で大規模な自爆テロ事件が頻発している。パリ、ベルギーのブリュッセル、そしてバングラデシュのダッカ。ダッカでは、同国のインフラ整備のために献身的に取り組んでいた7人の日本人が犠牲になった。そして、7月14日の革命記念日、フランスの…

物乞いの薬

「みんなのひろば」に「翁島の昔話聞き 大切な情け学ぶ」という投稿が掲載されていました。母の実家は浪江町請戸で、明治の初期、船主として100人ほどの従業員を使っていたそうです。漁獲が郡内一、二を争っていたと母が生前、話していました。ある日、汚い…

生きてほしかった

枕元の寄せ書き 百合ちゃんの頭蓋骨に骨肉腫が見つかったのは、1歳の時だった。国立病院での放射線治療後は、小学5年生まで元気に過ごしていた。鎌倉の大きな家でピアノのレッスンに励み、コンクールで表彰されたこともあった。 12歳の時、骨肉腫が再発した…

納屋にこもった老人

人生の意味 「ずっと納屋に閉じこもっている弟がいるんだ」宮古島のサトウキビ農家の、腰痛で歩けないため訪問診療していた千代さんの夫から相談を受けた。宮古島の大抵の農家には前庭に大きな納屋がある。弟の長英さんは69歳、終戦の5年後の20歳ごろから様…

生きることは幸せか

壊れていった家族 宮古島の官庁街にほど近い集落に住んでいた42歳のひろ子さんが連絡をくれたのは、訪問診療の患者が増えてきた頃だった。「私がこうなったのは、祟りのせいだと医者に言われた」と、ろれつの回らない島のなまりで言った。 ひろ子さんは数年…

大きく開いた目

独りで逝った人 診察室に、死んだ獣のような臭いが漂っていた。診療ベッドにうずくまって背中を丸めていた女性が振り返った。「飯田さんですね。担当の泰川と言います」彼女は脂気のない黒髪の中からギラギラした大きな目をのぞかせて、真っ直ぐに俺を見た。…

重症患者と取り残されて

諦めていい命? 1989年、東京女子医科大に新設された救命救急センターは戦場のような忙しさだった。大学を出た俺は、研修医として最初の4カ月をここで過ごした。患者は途切れなく運ばれてきた。2、3日眠れずに連続勤務することが多く、休日はなかった。先輩…

先祖の思い 魂宿る

小正月、雪で白一色だった奥会津に一気に彩りが加わる。団子さし、もぐら除けや長虫除け、賽(さい)の神、早乙女踊り、初田植、成木責(なりきぜめ)…奥会津には小正月の行事が多い。その一つに「道具の歳取り」がある。仕事や日常で使っている道具を祀り、…

世界に種をまき続け

1890年7月27日午後、ゴッホは野外制作に出かけた麦畑の近くで、胸を拳銃で撃ち自殺を図った。医師ガシェからてんかんが「不治の病」と告げられ、このままではいずれ絵が描けなくなると悲観した画家の、覚悟の上の行為だった。弾は急所を外れ、彼は出血する胸…