朴念仁の戯言

弁膜症を経て

2019-04-01から1ヶ月間の記事一覧

今生の課題

蟲が身体に棲息するようになったのは何時頃からか。 蟲が動き始めると訳の分からない感情が湧き起こる。些細な事に不機嫌になり、沸々と怒りを覚え、口を閉ざす。そして、寄らば斬るのベールを纏う。そのベールを払い除け、他人がズカズカと入り込めば、すか…

二人の患者

また厄介な病を抱えてしまい、総合病院の消化器科に通う羽目になった。 診察予約の日、待合室に向かうと、外科室から出てきたばかりの男と移動用ベッドに横たわった婦人が目に入った。もう一人、看護師のような病院服を着た、ずんぐりむっくりの婦人の姿もあ…

老いの行方

「脳に問題があって、もう務めることができません」電話の相手はいつもと変わらぬ口調で淡々と話した。町内会の役員も断ったという。電話の話具合からは脳の障害は少しも感じられないのだが・・・。自宅の玄関を閉ざし、外部との接触も遮断しているとか。それほ…

アウシュビッツ到着 ①

(もしわれわれが強制収容所においてなされた豊富な自己観察や他者観察、諸経験の総体をまず整理し、大まかな分類をしようと試みるならば、われわれは収容所生活への囚人の心理的反応に三つの段階を区別することができるであろう。すなわち収容所に収容され…

「夜と霧」出版社の序

1931年の日本の満州侵略に始まる現代史の潮流を省みるとき、人間であることを恥じずにはおれないような二つの出来事の印象が強烈である。それは戦争との関連において起った事件ではあるが、戦争そのものにおいてではなく、むしろ国家の内政と国民性とにより…

ひとりで死んでも「幸せな人」だった

私は一度だけしんちゃんに会ったことがあります。祖母を亡くした葬儀の時です。私が満4歳を目前にしていた時ですが、わりとよくその時の情景を覚えています。当時、私と両親は大阪に住んでいました。祖母は祖父、長女、次女とともに4人で富山県に住んでいて…

不運続きだった「本の虫」

しんちゃんは山本信昌(のぶまさ)という名前でした。信昌の信の文字から家族は「しんちゃん」と呼んでいました。母は男二人女三人の五人きょうだいの下から二番目。しんちゃんは末っ子です。私が大学生だった頃しんちゃんは52歳で亡くなっています。 第二次…

無駄な時間なし

前日、めったにひかない風邪で学校を休んだ。何かを予感していたのかと、今何となく思う。 あの日が家族や友人、大切な人と穏やかな日常を過ごせる最後の日になった人たちがいる。問い掛けたところで、返事は永遠に返ってこない。 どこにいるのかいまだに不…

悲しみ癒えることなく

「あのときの息子の体の冷たさ、それが原点です」全国自死遺族連絡会の代表理事田中幸子(70)の長男健一は2005年11月、34歳の若さで自らの命を絶った。当時、宮城県警塩釜署の交通係長。 連絡を受けて仙台市の自宅から署の官舎に駆けつけ「体に触ると氷より…

6歳の誕生日に

昨日、職場で新たな上司と世間話をしているうちに今日が6歳の誕生日であることに気が付いた。その日の命かと、不安と覚悟の日々から解放された今日(こんにち)の安心感が、この大事な日を忘却の彼方へ追いやろうとしているのか。この日を何の感慨もなく迎え…

象徴のうた 平成という時代 ㊽

今ひとたび立ちあがりゆく村よ 失(う)せたるものの面影の上(へ)に 平成24(2012)年 皇后 宮城県南三陸町から仙台へのご訪問の翌週、両陛下は、平成23年(2011)年5月6日に岩手県釜石市を、11日には福島市と相馬市などを見舞われた。毎週休みなく続けら…

愚かな宇宙探査

「世界初、地下岩石採取へ」 3月31日、新聞の見出しも大きく、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が探査機はやぶさ2を使い、〔小惑星りゅうぐう〕に爆薬を打ち込むとか。クレーターの形成過程の調査と、地下岩石を採取して太陽系誕生の痕跡を探るためらしい。月の…

新元号公表の日に

お前は、虚飾の装いで己を誤魔化し、他人の目を気にするケツ穴すぼまった男お前は、職場への不平不満を時折まくし立て、苛立ちを募らせる負け犬間抜けな薄ら笑いを止めろ お前は、自己本位の価値観を棚に上げ、他人を下位に評価する偽善者お前は、他人の粗(…