朴念仁の戯言

弁膜症を経て

2016-01-01から1年間の記事一覧

日雇いの夢

電車の窓から空を眺めると、なぜか田舎を思い出す空は田舎に繋がって、おれはひとり明日のために働いて3年何やってんだ、おれは中学ん時の夢追いかけて、八方塞がりになって、投げやりになって、人に迷惑かけてもまだ覚めねえ田舎で安い給料で働いて家族養…

今月8日に

今月の8日、天皇陛下は国民に異例の「お気持ち」を表明された。「象徴とは何か」憲法第1条に、「天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であって、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基づく」とある。憲法に象徴行為を示す具体的な規定は為さ…

気難し屋

「ご無沙汰だな。体調どうだ」Hの遠慮ない声を耳にし、同級生の気安さを感じながらも勤務中に掛かってきたせいか、外づらと内づらの切り替えがすんなりいかず、変に身構えてしまい、それはぎこちない声音となって表れた。「おう、久しぶりだな。変わりねえ」…

天の涙

職場での昼休み、イヤホンを通して流れる音楽を聴きながら図書館から借りた本を読む。外界の雑音を遮断して自分の世界に入ると徐々に安息の時が入り込んでくる。目にはアリステア・マクラウドの「冬の犬」。耳にはエリック・クラプトンの「Tears In Heaven」…

輪廻転生

椎名誠著の「ぼくがいま、死について思うこと」の巻末の、少し長いあとがきに二十歳の時に自死した友人Nのことが書いてあった。 車で子どもを撥ね、大怪我をさせてしまい、Nは自責の念から縊死した。 遺書には子どもへの詫びと悔恨の言葉、そして「死にた…

老いの行方

車をバッグして玄関前に乗り入れると、M伯父が丁度玄関口に出て来た。 伯父は目を見開き、びっくりしたような顔で私たちを凝視した。 「Mさん、元気だったがよー」 車の窓越しから母が訊ねた。 「あれ、誰だっけ、あのー、うー」 伯父は言葉にならない言葉…

銀色のはるか途上に試練あれ 

「遠い遠い はるかな道は冬の嵐が 吹いてるが谷間の春は 花が咲いてるひとりひとり 今日もひとり銀色のはるかな道」 仕事帰りにいつもの道を走らせていると、ラジオから懐かしいメロディに乗って淡々と歌詞が流れてきた。春の歌の特集らしい。春は、旅立ち、…

耳で見て 目で聞き 鼻で 物食ふて 口で嗅がねば 神はわからず

宮本信子主演の「ミンボーの女」だったか、老婦人がスーパーで手にする食品を次々と指で押し潰すシーンがあった。 実は母がこれに近いことをやる。 その度に私は、「買いもしないのにだめだよ、握っては」と強い口調で窘める。 すると母は、「つい握りたくな…

「保育園落ちた日本死ね」に想う

こういう言葉を吐かないと世論、国は動かないのか。 新聞でこの罵声の文字の羅列を見た時、発信者のヒステリックさが伝播し、胸糞悪くなった。 感情を吐き出したい事情はよく分かる。 事情は分かるが、ちょいと待てよ、と思う。 激情に任せた言葉が独り歩き…

夢幻

晩飯後の、燗酒で和らいだ身体を炬燵に滑り込ませ、見るともなくテレビを眺めていた。 次から次へと歌い手が登場し、持ち歌を歌っていた。 潮が知らぬ間に海辺を満たすかのように懐かしさが込み上げてきた。 もう二度と戻ることの出来ないその時代の自分も、…