朴念仁の戯言

弁膜症を経て

2016-07-01から1ヶ月間の記事一覧

天の涙

職場での昼休み、イヤホンを通して流れる音楽を聴きながら図書館から借りた本を読む。外界の雑音を遮断して自分の世界に入ると徐々に安息の時が入り込んでくる。目にはアリステア・マクラウドの「冬の犬」。耳にはエリック・クラプトンの「Tears In Heaven」…

輪廻転生

椎名誠著の「ぼくがいま、死について思うこと」の巻末の、少し長いあとがきに二十歳の時に自死した友人Nのことが書いてあった。 車で子どもを撥ね、大怪我をさせてしまい、Nは自責の念から縊死した。 遺書には子どもへの詫びと悔恨の言葉、そして「死にた…

老いの行方

車をバッグして玄関前に乗り入れると、M伯父が丁度玄関口に出て来た。 伯父は目を見開き、びっくりしたような顔で私たちを凝視した。 「Mさん、元気だったがよー」 車の窓越しから母が訊ねた。 「あれ、誰だっけ、あのー、うー」 伯父は言葉にならない言葉…