朴念仁の戯言

弁膜症を経て

2017-01-01から1ヶ月間の記事一覧

恥じを知れ

恥(は)ずること無(な)かる可(べ)からず人不可以無恥『孟子』※平成20年6月2日地元朝刊「金言名言」より。 孟子曰人不可以無恥無恥之恥無恥矣 孟子曰(い)わく人は以(もって)恥ずること無かる可からず恥ずること無きを之(これ)恥ずれば、恥無し 人…

節句

『日本人の美学5』 わが国には昔から五節句を祝う行事があります。近ごろではこの行事を考え違いしている人が多いようです。節句は一年間に五回あります。一月一日「正月」、三月三日「ひな祭り」、五月五日「端午」、七月七日「七夕」、九月九日「重陽」。…

プレカリアートの憂愁

『水の透視画法6』袋小路の疲れと屈折 皮膚からみずみずしさが消え、顔がいやに骨ばって、濃くくまどったようになっている。眼(め)はこころなしか黄色くかわき、よれた疲労感をただよわせていた。大学で客員教授をしていたときの教え子と四年半ぶりに会っ…

医師の嘆き 自業自得

『医療漂流5』萎縮の現場から ※平成20年4月25日地元朝刊より。 神奈川県大和市にある大和成和病院は、中規模ながら心臓血管外科の分野で高い専門性を持つ医療機関として知られる。院長の南淵明宏医師(50)が手掛ける心臓外科手術は年に200例近く。国内で突…

出会うこと

私の焼き物の原点は天目茶碗にあります。二十代の終わりごろ、NHKで曜変天目茶碗が放映された時、宗像窯伝来の鉄釉(てつゆう)の中にこれに近い輝きを見た記憶が蘇り天目茶碗への挑戦が始まりました。天目茶碗は天目型と言われるすっぽん口、御猪口(おちょ…

家族の原風景

『動物病院の四季4』ヒゲ獣医師の診療日誌 澄み渡る青空の美しい朝であった。僕の大好きな鈴木一家が、先週出産したばかりのマルチーズのアイを連れてやって来た。「先生、アイがだいぶ疲れている。点滴してやったらと思ってな」と父さん。「ここんところ毎…

不都合な他者について

『水の透視画法4』人の海で「愛」を問う ステージ中央にひとりになった。断崖(だんがい)におきざりにされたように心ぼそい。舞台上のスポットライトをひとつだけのこして、ホールの照度がすべて落とされると、客席はまるで月のない夜の海原である。さっき…

温暖化の進行、生態系直撃

『環境省予測 ガス削減の必要性示す』※平成20年5月地元朝刊より。 地球温暖化が進むと今世紀中に西日本を中心にコメの減収が深刻化、高潮被害の増加やブナ林の減少など日本の生態系や暮らしに大きな影響が出るとの予測の結果を環境省が29日、発表した。国内1…

知ったかぶりの戒め

知之為知之(之を知るを之を知ると為し)不知為不知(知らざるを知らずと為す)是知也(是知るなり) ※平成20年5月27日地元朝刊「金言名言」より。 孔子が血気盛んな弟子・子路(由)に教え、戒めた言葉。「由よ、おまえに知るということはどういうことか教…

くぐもる「個」の沈黙

『水の透視画法3』乳白色の暗がり ガラスばりのカフェにすわり、バス道路にできた不思議な銀色の水たまりを、まばたきしながら見ていた。水たまりは妖(あや)しい光芒(こうぼう)をあげて左右にゆらめいている。逃げ水だ。手前の横断歩道でも光が屈曲し、…

時ならぬ人と虫たち

『水の透視画法2』永久凍土のとける音 歩道わきの枯れ草のうえを、うす緑の、か細く小さな虫が一匹はい動いていた。立春からまだ日もあさい昼下がり、ゆうちょ銀行にいく途中だった。眼(め)の錯覚かな、と腰をかがめてみると、羽化後まもないらしいカマキ…

飼い猫と野良猫のはざま

「動物病院の四季3」ヒゲ獣医師の診療日誌 私は手術助手の家内を相手に当たり散らしている。別段、家内に腹を立てているわけではない。体重5㌔もあるメス猫の避妊手術の最中なのだ。皮下脂肪は厚いところで1㌢を超え、おなかは脂肪組織で満たされている。…

栴檀の大樹の下で

『水の透視画法 1』ゆらめく善悪の影絵 にび色の午後のことだ。いつもの散歩コースをはずれて、小学校の正門にさしかかったら、いきなり高音域の声がはじけ、子どもたちがパチンコ玉みたいにばらばらと飛びだしてきた。てんでにちがう服なのに、みんながカ…

優しくなったお父さん

ブログのネタは新聞切り抜きからとしたが、ネタも何も引用そのままになってしまった。それでもいい。これを読み返せば当時の自分に会える。何を欲し、何を目指していたのか。自分を探るに良い機会だ。 タイトル「動物病院の四季」、サブタイトル「ヒゲ獣医師…

息子を失くして亡母の言葉痛感

今、母親と同じ年ごろになって母のあのときの言葉が昨日にように思い出されます。母は長男と次兄が亡くなったときは気も狂わんばかりに毎日、毎日泣いてばかりのいたのです。そのとき私が、「そんなに悲しいの。代わりに私が死ねばよかったのにな、母ちゃん…

お正月

お正月 二ねん 野上房雄 お正月にはむこうのおみせのまえへキャラメルのからばこひろいに行く香里の町へえいがのかんばん見に行くうらの山へうさぎのわなかけに行くたこはないけど たこはいらんこまもないけど こまはいらんようかんもないけど ようかんはい…

出会い待つ旅 始まる

「成人の日」エッセー 1976年5月、20歳になる一カ月前、僕は東京・吉祥寺の井の頭公園のベンチに座っていた。高知という片田舎から期待に胸を膨らませて上京した人間にとって、学園紛争後の東京の空気はやけに空々しく、まして自分の将来の見取り図が描けな…

いつだって人生やり直し

昨年末のテレビ番組に覚醒剤で捕まった清原和博が出演していた。自業自得と言えど覚醒剤使用から逮捕されて独房入りするまでの状況と、そして、涙ながらに「息子に会いたい」と話す清原の哀しい姿。 その映像から目を離すことができず、言いようのない感情が…

宇宙の法則

「この世界に異変が来ていることに、多くの人が気づいているらしい」 この書き出しで、タイトル「マトモではない現代」は始まる。筆者は、東大名誉教授(平成19年9月現在)の養老孟司さん。 「虫の異変について、私がいいたいことは簡単である。世の中の現象…

言葉の力

正月三が日も過ぎ、平常の生活に戻って年初の投稿。 何を書こうか、前回の「日雇いの夢」の裏話にしようか、つらつら考えた挙句、新聞の切り抜き記事をネタに書こうと決めた。 10年前の1月20日の地元紙サロンから、タイトルは「ありがとうの不思議な力…