朴念仁の戯言

弁膜症を経て

2019-02-01から1ヶ月間の記事一覧

種蒔く人 ⑧

このようなわけでこの札幌の本屋さんが、私にとりまして大恩人でございます。自分で行きますればたいへんな費用がかかりますが、厚生省から行けといわれる。こんな結構なことはございません。まず札幌に行って、50銭の大辞林をくださったあの本屋さんに会い…

身を賭し子を守った父

今年も北海道は、厳しい冬のようです。この時期になると、6年前に発生した痛ましい事故が思い出されます。 猛吹雪の日、父が車で小学3年の娘を児童センターに迎えに行きましたが、帰りに車が雪に突っ込んでしまいました。ガソリンが少なかったことから、近く…

種蒔く人 ⑦

「妻ちゃん(順教さん若かりし頃の芸名)、あんた明けても暮れても勉強がしたい、したいといっているけれども、可哀想にどこに行っても断りをいわれているそうだが、いっそ字引きを買って、字引きで勉強したらよいではないか」と(ある人が)いってくれまし…

取り留めもなく

昨日、母に宅配物がありました。宅配物の段ボール箱には「落花生」の大きな文字が書かれてありました。箱の中には落花生の菓子がたくさん入っていました。 母は、このことを早く私に知らせたかったのです。私が仕事から帰って家に入るとすぐに、母は段ボール…

私の心がけ ⑥

それからの私は何事によらず、自我を捨てて素直に、人の手を感謝して貸してもらうように心がけました。まして双手のない私は、誰の器にも入れるように、一つの輪の中へ融け込むようにと、努力しました。 それは決して封建的でも、自由束縛でもありません。さ…

心の声

4人だけの男だけの職場。なぜこのメンツで仕事をしているのか、ふと考える。しゃべりたくなければ黙っていればいいし、他愛もない会話に愛想付き合いすることもない。気を遣う必要もなく気楽だが、そのせいで投げ遣りで雑な気遣いになっていることに気付く。…

血の出るような思い ⑤

私は体をかたくして、丁寧に校長先生に頭を下げました。 「私(わて)、今この土地の寄席に出ています両腕のない芸人でおますが、カナリアに字を書くことを教えてもらいました。先生、どうぞ私に字を教えておくれやす、筆は口に慣れましたが、字を知りまへん…

悲しみの涙 ④

捨て身の修行者が断崖から飛び、羅漢果(らかんか)を得た悦びと申しましょうか、私は自由に筆が動くうれしさで、胸がおどるのでありました。 さて、筆は思い通りに動く、さあ、何という字を書こう、と白紙に向かいました時、私の眼から大粒の涙が紙の上にぽ…

小鳥の教え ③

人は誰でも物質が一番先にたつように申しますが、私は物質よりも他に求めている物があるような気がしておりました。 ではそれは何である、といわれましたら、さあ、何でしょう、自分でもわかりませんが、私の心は槌(つち)の下でうちひしがれた藁のように力…

ピカピカ電気で疲れ切った並木

「ライトアップは電力の無駄遣い」に全面的に賛成です。光のページェントやら何やかんやいって、並木になんか電気をつけて喜んでいる。樹木だって夜はゆっくり休みたいはず。それなのに一晩中、ピカピカ電気をつけて「並木いじめ」をしている。並木は黙って…

内で習いが外で出る ②

それは、私が15の年の正月だったと記憶しております。私が家のご不浄から出て参りますと、そこにお義父さんが立っていました。そして私に、 「妻吉(つまきち)、お前、今年いくつになった?」 「私(わて)、15になりました」 「ふうん15にな、15の娘がご不…

使命に生きよ ①

(「堀江遊郭6人斬り」から生還して退院時のこと) 私はいよいよ今日、退院することになりました。院長さんを始め、婦長さんや、その他の先生方、看護婦さんたちに、お礼やらご挨拶に参りました。さてこの病院を出るとなれば、何となく心残りでもあり、4年ぶ…

感服する思い

生きてこそ生きてこそ咲く老いの花 佐藤良子 川柳三日坊主主宰・県川柳連盟副会長の佐藤良子先生の作品です。私事になりますが、昨年4月にがんの手術、それから半年間抗がん剤治療での入退院生活を送りました。その際いただいた見舞状に添えられた句です。「…

指し続け うつ乗り越えた

闘病つづった本が話題 先崎学 九段将棋の先崎学九段(48)は才能豊かな棋士として知られているが、2017年にうつ病を発症し、約1年間休場した。回復までの日々を赤裸々に描いた「うつ病九段」(文芸春秋)を出版、話題を呼んでいる。人気棋士はどう病気を乗り…