朴念仁の戯言

弁膜症を経て

2020-11-01から1ヶ月間の記事一覧

The Wheel of Life 6

第10章 蝶の謎⑵ 収容所が解放され、門があけられたとき、ゴルタは怒りと悲しみのきわみで麻痺状態におちいっていた。せっかくの貴重な人生を憎しみの血へどを吐きながらすごすことが虚しく思えてきた。「ヒトラーと同じだわ」とゴルタがいった。「せっかく救…

The Wheel of Life 5 

第10章 蝶の謎 ⑴ 蝶だった。 みると、いたるところに蝶が描かれていた。稚拙な絵もあった。細密に描かれたものもあった。マイダネック、ブーヘンヴァルト、ダッハウのようなおぞましい場所と蝶のイメージがそぐわないように思われた。しかし、建物は蝶だらけ…

The Wheel of Life 4

第3章 瀕死の天使 金魚鉢にはもうひとつベッドがあった。そこにはわたしより2歳年長の少女が横たわっていた。いかにもひ弱な感じで肌が青ざめ、透きとおっているようにみえた。翼のない天使、磁器でできた小さな天使を思わせた。その子を見舞う人はいなかっ…

The Wheel of Life 3

第2章 さなぎ どんな人にも守護霊または守護天使がついていると、私は信じている。 霊や天使は人間の生から死への移行に手を貸し、生まれるまえに両親選びを助けてくれているのだ。

The Wheel of Life 2

第1章 偶然はない 両親の推測によると、わたしはまじめに教会に通う、しとやかなスイスの主婦になるはずだった。 ところが、いざ蓋をあけてみると、なんとアメリカは南西部に居を定め、この世よりははるかにすばらしく荘厳な世界の霊たちと交信する、依怙地…

The Wheel of Life 1

エピグラフより。 地球に生まれてきて、あたえられた宿題をぜんぶすませたら、もう、からだをぬぎ捨ててもいいのよ。 からだはそこから蝶が飛び立つさなぎみたいに、たましいをつつんでいる殻なの。 ときがきたら、からだをてばなしてもいいわ。 そしたら、…

The Wheel of Life

弁膜症の初期症状が表れ、初めてカテーテル検査を受けた十数年前。 その後、月一の割合で通院し、診察ついでに栄養指導を受けるようになった。 その日、指定の時刻に栄養指導室に出向くと、担当の栄養士は入院患者の指導で不在だった。 別の栄養士が「検尿し…