朴念仁の戯言

弁膜症を経て

The Wheel of Life

弁膜症の初期症状が表れ、初めてカテーテル検査を受けた十数年前。

その後、月一の割合で通院し、診察ついでに栄養指導を受けるようになった。

その日、指定の時刻に栄養指導室に出向くと、担当の栄養士は入院患者の指導で不在だった。

別の栄養士が「検尿して少し待ってください」と言って紙コップを渡した。

検尿後、指導室に戻り、椅子に座って見るともなく室内を見渡していると、出入り口近くにある書棚に目が止まった。

時間つぶしに書棚を覘いてみると、当然のように医療に関する本がほとんどだった。

『人生は廻る輪のように』

医療関係の本に紛れて異質のタイトルの文庫本が目を引いた。

不思議な期待感が押し寄せた。

著者は、医学博士・精神科医エリザベス・キューブラー・ロス

表表紙の、青い光沢の翅の、蝶のイラストが好奇心を掻き立て、裏表紙のあらすじを読んでは胸が高鳴った。

書棚には小さな紙に「貸出可。貸出希望の方は当職員へ申し出てください」と書いて貼ってあった。

 

本を借りた。

その後、ネットで購入して数回読んだ。

本書は、これまで見えなかった精神世界の扉を開けてくれた。

 

備忘録的に心に響いた文をいくつか取り上げておきたい。

栄養指導室で手にした時、何が読ませたいと思わせたのか。

今回は、第1章『偶然はない』の中から。

人生の個々のできごとは、たがいに嚙みあわないようにみえるかもしれない。

だが、わたしは経験をつうじて、人生に偶然などはないということを学んできた。

起こったことは、起こるべくして起こったのだ。