朴念仁の戯言

弁膜症を経て

物乞いの薬

「みんなのひろば」に「翁島の昔話聞き 大切な情け学ぶ」という投稿が掲載されていました。
母の実家は浪江町請戸で、明治の初期、船主として100人ほどの従業員を使っていたそうです。漁獲が郡内一、二を争っていたと母が生前、話していました。
ある日、汚い衣服を身に着けた物乞いが来たそうです。近隣の村人は追い払い、水を求められても与えずに帰したとか。そんな中、温厚で情け深かった母の祖父母は家に上げ、茶を飲ませた上で5、6年ほど居候させたとのこと。帰りにはおむすびと銭を渡してあげたそうです。
弘法大師に倣い、全国を修行行脚している僧だったらしく、お礼に「のどけ」の薬を教えてくれました。のどけは扁桃炎のことです。この薬で数え切れないほどの人が治癒したのです。明治、大正、昭和、平成と、代々「家宝」として受け継がれています。
「人は身なりと様子で判断してはいけない」という母の言葉が身に染みます。

二本松市の吉崎君男さん75歳(平成28年6月30日地元紙掲載)

情けは人の為ならず
物の豊かさを追い求め、経済優先とした近代びとの喪失したものの何かを、この投稿に教えられた。