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朴念仁の戯言

弁膜症を経て

宇宙の法則

「この世界に異変が来ていることに、多くの人が気づいているらしい」

この書き出しで、タイトル「マトモではない現代」は始まる。
筆者は、東大名誉教授(平成19年9月現在)の養老孟司さん。

「虫の異変について、私がいいたいことは簡単である。世の中の現象で理由がないものはない。しかしその理由が一つとは限らないのである。
答えが一つでないと、いまの人は怒る。考えるのが面倒くさいからであろう。要点をいえ、要点を。そういうことになる。人間相手の世間ではそれでいいかもしれないが、自然を相手にするとそうはいかない。
虫の世界に異変が生じているというが、虫にはいったい何種類あるか。少なく数える人で五百万種、多く数える人で三千万種。一口に虫の世界というけれど、とてつもなく複雑である。それを一言で異変とか温暖化とかいう。その単純さに、むしろ私は現代を見る」

「虫の世界に異変が起こったのは、私が学生だったころ、もう半世紀も前である。それがいまでも続いていて、とうとう普通の人でも気がつくようになった。それだけのことではないか。夏の盛りに咲くシシウドの花は、以前は虫で真っ黒だった。いまでは花そのままで白い。それが異変でなくてなにが異変だ。
ハエはほとんどいなくなった。害虫がいなくてよかったと人々は思うであろうが、虫が住めないということは、じつはいきものには住みにくい世界になったということである。老人はそうでない時代に育ち、快適な世の中になったから、文句をいわない。若い世代はハエがいない世界が当然の世界だと思っている。本当にそうかというなら、その「当然の」世界はたかだかこの半世紀にしかすぎない。
この半世紀と、人類の歴史数万年と、さらに生きものの歴史の数十億年を比較したら、どれが当然でマトモな世界だろう。現代は決してマトモな時代ではない。虫の異変はそれを正直に示しているだけなのである」※平成19年9月7日地元朝刊より。

鍾乳石が一滴のしずくから悠久の時を経て形作られるように、自然界も天変地異を除けばゆるやかに変化していくものを、1760年代にイギリスで始まった産業革命以降の僅か250余年で人類の飽くなき欲望によって地球は劇的に致命的な変化を遂げ、今なおその加速度的変化を止めようとしない。
地球の未来に誰もが何かしらの言い知れぬ不安を抱えながらもそれを直視し、見直す覚悟も持たず、行動も起こさず、人間の都合だけを膨らませて生死を繰り返す。果ては地球外に逃避しようとまで画策する愚かさ。
やりたい放題やっておいてそれはないよ、人間。
宇宙の法則、秩序を乱すものは完璧に淘汰されるというのに。