朴念仁の戯言

弁膜症を経て

「英知と無知」感じる

池内 了(いけうち さとる)著    科学は、どこまで進化しているか

宇宙に終わりはあるのか。地球以外の星に生命は存在するか。地震や火山爆発の予知は可能か。原発の危険性の本質とは。人類が滅ぶとしたら、何が原因か…。
天文学者で宇宙物理学者の池内了(1944年~)の著書「科学は、どこまで進化しているか」はスケールの大きな問いに次々に見解を述べる。
読みながら「人間はそんなことまで解明していたのか!」と驚き、「私たちは、私たちが住む世界のことを、まだほとんど知らないんだなあ…」と呆然とする。人間の英知と無知の両方を感じて、不思議な気持ちになる本だ。
宇宙は138億年前に高温度・高密度な状態から膨張を始め、今も膨らみ続けているという。地球の誕生は46億年前。最初の霊長類が生まれたのは6500万年前で、恐竜が絶滅した「生態的な空き地」に進出した。現生人類の祖先、ホモ・サピエンスの出現はわずか20万年前-。時間の感覚がおかしくなってくる。
地震や火山爆発の予測は「現状では不可能」と池内ははっきり書く。他にも「明らかになっていない」「謎のままである」といった記述がたびたび出てくる。がんの特効薬はできないし、エネルギー問題も今後どうなるか見通せない。
「人類が滅ぶとしたら、何が原因か」という問いに池内は、「私がもっとも心配するのは、欲張りで、向こう見ずで、先行きのことを考えずに自分の利得だけを考える、そんなバカな人類であるために絶滅してしまう危険性があることだ」と書く。そして、地球温暖化によって起こる飢餓、殺人ウイルスの蔓延、核戦争といった様々な悪夢を示すのだ。
科学の、人間の限界を自覚し、謙虚であること。それが本当の知恵だと気付かされる。

※地元紙ジュニア新聞「本の世界へようこそ」より