晩飯後の、燗酒で和らいだ身体を炬燵に滑り込ませ、見るともなくテレビを眺めていた。
次から次へと歌い手が登場し、持ち歌を歌っていた。
潮が知らぬ間に海辺を満たすかのように懐かしさが込み上げてきた。
もう二度と戻ることの出来ないその時代の自分も、浮かび上がってきた。
若かったこの歌い手たちは、もういない。
次から次へと死んでいった。
人は必ず死ぬ。
この世は夢幻。
いつか私もこの歌い手たちに続く。
人の儚さ、愛しさが酔いに同調し、妙な感傷を覚えた。
「人を楽しみ、苦しみも、辛さも楽しみ、人として死にたい」
こぼれ出た独り言が母への問いかけになった。
母は、歯磨きの手を休めて振り返り、私の顔を見て仏のように微笑した。