朴念仁の戯言

弁膜症を経て

心を動かされた辻井さんの一言

盲目のピア二スト辻井さんが国際大会でチャンピオンに輝き、凱旋帰国した。

マスコミからの取材で「夢はかなったと思いますが、ほかに何か、かなえてもらえるなら」の質問に「一度でいいから、一瞬でいいから、母の顔が見たい」と答えていた。

この言葉に感動し涙しました。私の知り合いにぜんそくを患っている人がいますが、ぜんそくの発作は大変苦しく、呼吸さえ満足にできないほどだそうです。発作が治まると、呼吸が楽になりすごくうれしい、と言っていました。

目が見えること、呼吸ができること、当たり前のことですが、いざできないとなると、どれだけ苦しく切ないことか。日常生活が普通にできると、人間は苦しかったことを忘れがちになります。

現代の日本社会は親殺し、子殺しに加え、数々の汚職、偽装に満ちあふれています。ほとんどの人は両親や祖父母が、新しい日本をつくるために払った努力を知らないと思います。

幾星霜が過ぎ日本は大きく変わったと思われる。道徳と倫理の国日本。盲目のピアニスト辻井さんの、心から素直に出た言葉に感動すると同時に、深く考えされられた。

国見町の菅井昭子さん68歳(平成21年6月26日地元朝刊掲載)