朴念仁の戯言

弁膜症を経て

無駄な時間なし

前日、めったにひかない風邪で学校を休んだ。
何かを予感していたのかと、今何となく思う。

あの日が家族や友人、大切な人と穏やかな日常を過ごせる最後の日になった人たちがいる。
問い掛けたところで、返事は永遠に返ってこない。

どこにいるのかいまだに不明、身寄りのない仮設住宅での生活、東京電力福島第一原発事故からの避難による離散・・・。
惨劇の前日までは変わりない平穏な毎日があった。
ホッとする町があった。
頼れる地域の人がいた。
友がいた。
家族がいた。

時が立つことは世の中も変わること。
物が変わり、人も変わる。
しかし変わることが全てではない。
変わらないことだって、人生にあっていい。

ずっと海を眺めていたければ日が暮れるまで思う存分、眺めればいい。
色のないモノクロ写真の中にいたければ大きく深呼吸できるまで額縁の中に入っていればいい。
そこで費やす時間には、一つも無駄なものはない。


仙台市吉田有希さん19歳(平成31年3月25日地元紙掲載)