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朴念仁の戯言

弁膜症を経て

詐欺

「なんで騙されんだべ」

今朝の母のひと言。

「なりすまし(オレオレ)詐欺」の被害に遭った男性の新聞記事を見て、口を衝いて出たのだ。

被害額は200万円。

新聞やテレビで毎日のように報道されているのに何故こうも騙されるのか、不思議でならなかった。

 

「金、あっからだべ」

以前ならそう答えていたが、先日、NHKで被害にあった方を取り上げていた特集番組を見て、単純にそうとばかりも言えないと思うようになった。

複数人による手の込んだ仕掛け。

狙う側の立場が断然有利だ。

年齢、家族構成、同居者の有無など最低限の必須項目を押さえ、犯行に及ぶ。

手始めの電話の応対で標的は更に絞り込まれ、罠に掛かる確率は高くなる。

狙われる側は大半が高齢者。

振り込ませる理由は、子どもの、横領金の穴埋め、交通事故や情事の始末金など世間体が悪く、表沙汰にできない内容だ。

しかも時間がないとして金銭の準備を急がせる。

 

母の背を見て一瞬想像を巡らせた。

母は一人暮らしで、子どもたちは遠くに住んでいる。

その子どもたちは孫の養育や職場の忙しさに日々汲々として母との連絡も途絶えがち。

母の日常には会話らしい会話がなく、時折、テレビに笑い、悲しむだけ。

母の思考は限定され、判断力は鈍り、五官も衰えていく。

そこへ息子から一本の電話。

「会社の金を横領してしまった」

母は息子の切迫した声に驚き、微塵の疑いもなしに言われるがままに僅かな蓄えを振り込む。

 

連日の詐欺報道の陰に、我が子を一途に想う親心が見える。

被害に遭われた方には大変不謹慎な言葉だが、このような親がいることに、このような人たちが住む日本に安心感を覚える。

この人たちは老後の蓄えを喪い、路頭に迷うことだろう。

この世を旅立つその時まで辛い日々を過ごすかも知れない。

しかし、あの世は、我が身顧みず我が子を救おうとした行為を正当に評価すると信じる。

同様に、我が良心(両親)を裏切り、悪に手を染めた連中はそれを悔い改めない限り、今後、あるいはあの世で、きっちりと清算されるに違いない。