朴念仁の戯言

弁膜症を経て

部下は「地獄の中の菩薩」

東京電力福島第1原発事故で収束作業の陣頭指揮を執り、食道がん療養のため昨年12月に退任した吉田昌郎前所長(57)が、復興をテーマに福島市で来月開かれる出版社主催のシンポジウムにビデオ出演することが24日に分かった。
約30分にわたるビデオ映像で、吉田氏は危険を顧みず行動する部下たちを「地獄の中の菩薩」に例えて感謝する気持ちを表現。また「原子炉の冷却作業をする人間は撤退できない」と語り、死を覚悟していたことなど生々しく明かしている。吉田氏が事故直後の現場指揮官としての心情を一般に向けて詳しく語るのは初めて。
吉田氏は昨年3月に原子炉建屋の水素爆発が起きた後、部下たちが「現場に飛び込んで行ってくれた」と語る。その上で「私が昔から読んでいる法華経の中に登場する、地面から湧いて出る菩薩のイメージを、すさまじい地獄みたいな状態の中で感じた」と、部下の後ろ姿に手を合わせて感謝していたという。
政府事故調などで、東電の全面撤退問題が議論になっているが「基本的に私が考えていたのは発電所をどうやって安定化させるかということ。現場で原子炉を冷却する作業をしている人間はもう撤退できないと思っていた。本店にも撤退ということは一言も言っていない」と言い切った。
昨年3月14日の3号機の水素爆発時は、がれきが飛んでくるなど「(指揮を執っていた)免震重要棟の人間は死んだっておかしくない状態だった」といい、「これからもう破滅的に何かが起こっていくんじゃないか」と恐怖を感じたという。

平成24年7月25日地元紙掲載