朴念仁の戯言

弁膜症を経て

風情ある和語の数詞

「ひとつ、ふたつ、みっつ・・・やっつ、ここのつ、とお。何で次は『じゅういちつ』って言わないの?」
私の勤務先の学習塾に通う小学3年生のよし君が面白い質問をしてきました。
皆さんは答えられるでしょうか?
これは、「ヒ(ト)、フ(タ)、ミ、ヨ、イツ、ム、ナナ、ヤ、ココノ」に「ツ」を付けた、ものの集まりを表す和語の数詞で、その歴史は奈良時代古事記までさかのぼることができます。
他にも、中国伝来の「イチ、ニ、サン・・・ハチ、ク、ジュウ」の呉(ご)音、「イツ、ジ、サン・・・ハツ、キュウ、シュウ」の漢音があります。
お手玉遊びなどで「ヒフミ・・・」になじみのあるシニア女性の中には、よし君と同じ疑問をお持ちの方もおられるかもしれません。
今は「トオ」の次は呉音の「ジュウイチ」になってしまいますが、実は昔は和語にも続きがあったのです。
「11」以降は、数の位の間に「アマリ」を入れて「トオ・アマリ・ヒトツ」「トオ・アマリ・フタツ」と言いました。「20」は二十歳の「ハタ」で、「23」なら「ハタ・アマリ・ミッツ」。「30」からは三十路(みそじ)、四十路(よそじ)のように、「十」を「ソ」で表します。
百は「モモ」、千は「チ」、万は「ヨロズ」です。人名の「百瀬(ももせ)」や「千歳(ちとせ)あめ」「八百万(やおよろず)」などに今も名残があります。風情ある和語の数詞ですが、呉音の方が二桁以上の数を容易に表せることから、「トオ」までしか使われなくなってしまいました。

※遠山真学塾・主任相談員の小笠直人さん(平成29年4月3日地元紙掲載「数楽へのいざない」より)