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朴念仁の戯言

弁膜症を経て

思いやり込める上書き

『日本人の美学12』時と場所

いつどこで、どのようにのし(熨斗)袋を使うのか。のし袋は思いがけないところで必要になってきます。
「のし袋の上書きは御祝、寸志、御霊前の三つだけ知っていれば恥をかくことはない」と発言した人がいてびっくりしたという話を以前書きました。のし袋の上書きには、それぞれの意味と思いやりがあるのです。例えば病気見舞いの時は「御見舞」になります。退院してお返しの時は「快気祝」になります。また「祝入学」の返礼は「内祝」になります。差し上げる場合は祝が上になり、返礼は祝を下に書くのが通例です。
葬儀の時は「御霊前」と上書きします。この場合は薄墨で書きます。市販しているのし袋は「御霊前」と黒々と印刷してありますが、せめて自分の氏名は薄墨で書くとよいでしょう。葬儀に行くことは何かのかかわりがあったからこそ行くのです。亡くなった人に対して哀悼の思いで「私は涙が止まりません。字も曇りがちです」という意味があります。
通夜は身内や親せきが亡くなった人と最後の別れをする場所です。現在では仕事の関係などで、このしきたりは薄れてきました。のし袋にお金を入れる時は、陰陽の解釈でのし袋を開いた時に、お金は裏が見えるように入れます。
葬儀返礼の表書きは「志」になります。昔は若くして亡くなる人が大勢いました。人生わずか50年の時代です。志半ばで他界した人の心の表れといわれています。

小笠原流礼法第32世宗家直門総師範の菅野菱公さん)平成20年9月9日地元朝刊掲載