朴念仁の戯言

弁膜症を経て

天の涙

職場での昼休み、イヤホンを通して流れる音楽を聴きながら図書館から借りた本を読む。
外界の雑音を遮断して自分の世界に入ると徐々に安息の時が入り込んでくる。
目にはアリステア・マクラウドの「冬の犬」。
耳にはエリック・クラプトンの「Tears In Heaven」。 
語りかけるように流れる歌詞。
歌詞の意味も知らずにただ音調に魅せられて聴いていた。
有名な曲らしいが、音楽に疎い者には自分の感性に合うか合わないか、それだけが基準。
なのにパソコンの画面に映る和訳の歌詞を何気に見て惹き込まれてしまった。
誰に語りかけているのだろうかと。

クラプトンと女優ロリとの間に子どもが生まれた。
息子の名はコナー。
クラプトンは自分の生き写しのような息子をこよなく愛していた。
この日、4歳のコナーは自宅で家政婦と過ごしていた。
自宅は高層アパートの53階。
家政婦はコナーの部屋を掃除していた。
窓を拭き、開けたまま部屋を出た。
コナーは開いた窓に吸い寄せられるようにして身を乗り出し、亡くなった。

この悲しい出来事がTears In Heavenを生み、クラプトンを立ち直らせた。

死は、当事者のものだけじゃない。
死は、生きている人間に問いかける。
死は、生の始まりでもある。