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朴念仁の戯言

弁膜症を経て

カテーテル検査翌日②

まな板の鯉、その体でその時を待った。

私の右目に、眼鏡をかけた男の姿が映った。

K医師だ。

K医師は、布を折りたたんだような大きさ20㎝四方のものをおもむろに私の右脚のつけ根に置き、その布をパタパタと広げ始めた。

上は胸元から、下は膝小僧まで、その布ですっかり覆われてしまった。

カテーテルの挿入口の、右脚のつけ根だけは円形に穴が空いているようだ。

「はい、ちょっとチクッとするよぉ」

K医師はそう言いながら、右脚つけ根に麻酔針をブスリ。

「はい、またチクッとするよぉ」

と、今度は皮下層の深いところにブスリ。

それが終わると、K医師はビニール袋状のものを両手に掲げ、その中から細長い針金状のものをスルスルと引き出した。

これがカテーテルか。

内心でつぶやいた。

一人ひとり動脈の大きさは違い、それに合わせてカテーテルの径は決まる。

K医師の手指が私の大腿部に触れた。

あったかい。

K医師の手指の思いのほかの温かさに、私の心は安らいだ。

その手がすばやくカテーテルを送り出した。

動脈にカテーテルが滑り込んでいくのが分かる。

だがそれも初めだけで、あとはK医師の手の動きを感じるだけだった。

それから数分もしないうちに私の頭上にあった、ヘアーネットで覆われたようなモニター(レントゲンか)が胸の上で止まった。

「はい、ちょっと練習しましょう。はい、息を吸ってぇ、はい、吐いてぇ」

「はい、それでは本番いくよぉ。はい、吸ってぇ、はい、止めてぇ」

5秒くらい息を止めた。

「はい、楽にしてぇ」

それを2回ほど繰り返した後、例のモニターが胸元を回るように動き始め、胸の左上部斜めの位置に止まった。