朴念仁の戯言

弁膜症を経て

安倍一強とおもねる官僚

森友学園に対する国有地の破格な売却をめぐり、財務省の決裁文書改竄問題が政局を揺るがしている。
犯罪になるようなことを、なぜ財務官僚が行ったか。
その背景について、中央省庁の現役やOBの官僚に話しを聞くと、首相官邸と官僚の歪んだ関係が浮かび上がってくる。
安倍晋三政権は2014(平成26)年、内閣人事局を設置し、政治主導のためとして各省庁の審議官クラス以上、約500人以上の人事権を握った。
安倍政権が「一強」となって長期化、首相官邸から指示や命令が下りてくる。
官僚は行政のシンクタンクの役割を担っているはずだが、それが麻痺し、首相官邸に唯々諾々と従う傾向が強まってきているという。
そして、首相官邸に逆らったり、にらまれたりしたら官僚として出世できないし、排除される恐れもある。
官僚は今、「萎縮」するばかりで、首相官邸の意向を「忖度」し、「おもねる」風潮が強まっている。公文書の改竄は、そんな中で起きた。

財務省が改竄し、削除した主なものに、首相の昭恵夫人の関わりを示す部分がある。
財務省が改竄を始めたのは、首相が「私や妻が関係していたということになれば首相も国会議員も辞める」と表明した直後からだとされる。
首相官邸のトップの夫人が記述されている原本はまずいとの判断が働いたのであろう。
改竄と並行して佐川宣寿理財局長(当時)は、土地売却への政治の関与を否定、「資料は廃棄した」「適正な取引」など答弁し続け、国会や国民を欺き続けた。その論功行賞か、佐川氏は「適材適所」だとして国税庁長官に起用された(9日辞任)。

首相の親友である人物が設立した加計学園獣医学部をめぐっては、「総理のご意向」文書が問題になった。この文書の存在を文部科学省の事務方トップである次官だった前川喜平氏が証言した。
すると、前川氏の私的行動まで新聞にリークされた。
首相官邸が、逆らう前川氏を貶めるためだったとされる。

南スーダンへの国連平和維持活動(PKO)でも文書問題が起きた。
首相は派遣した自衛隊に武器使用を可能にした「駆け付け警護」を新任務として付与した。
宿営地近くで「戦闘」が行われていると記された現地からの「日報」を「廃棄した」としていたが、実は防衛省内に残されていたことが発覚した。
首相が指示した新任務の危うさを隠す意図が、防衛官僚にあったのではないかとされている。

首相が「働き方改革」の目玉とした、裁量労働の対象拡大をめぐる厚労省のでたらめなデータも問題になったばかりである。

一強官邸に、「国民全体の奉仕者」であるべき官僚がおもねる。
改竄の真相究明と同時に「政と官」のこのおかしな関係にメスを入れなければならない。

※元共同通信社編集局長の国分俊英さん(平成30年3月18日地元紙「日曜論壇」より)

 

「政と官」のおかしな関係は改善されたのか。
モリカケ問題の真相は究明されたのか。
官邸が処方した時間という忘れ薬に毒されないよう、国民は忘却することなく、監視怠りなく、己がやり方で一人一人が事あるごとに世論に訴えていかなければ、日本の未来を担う子どもたちは大人の嘘を、言い逃れできる罪を正当と見なし、やがて社会は善を隅に追いやり、悪を一段崇めて必要悪として染まっていくことだろう。(朴念仁)