朴念仁の戯言

弁膜症を経て

三度入院の師僧 眠るような最期

私の師僧は21年前に満99歳で死去した。
弟子入りした時が師僧86歳、それまで一度も医者にかかったことがないのに私は三度病院に運んだことがある。

最初は脳の4分の3が真っ白だと言われたので脳出血か。
入院して一週間後、退院するまで医者はCTを撮ったのみ。
意識が回復したら本が読みたいと言った。
「不思議なことですが、周りの健康な脳細胞が血を吸収しています」と医者。

5年後、次は結核
これも本人は元気なのだけれど法定伝染病だから仕方なく三カ月入院した。
そして晩年の98歳のとき、山登りをしていて転倒し鎖骨を骨折、利き腕にギブスをはめられていたが、食事時間は外すので意味がない。
これも一週間で骨がくっついた。

最期は好きな風呂に入って眠るように。
献体1年後、解剖学教授に師僧は肝臓がんだったと聞かされた。
それもビッグサイズの。
「ここまで大きいと何か症状があるはずですが?」と聞かれた。
だるいとかあったかもしれないが、一世紀生きたら、こんなもんだろうと笑っている師
僧の顔が浮かんだ。

病院に行くから、病気が発見される。

いわき市の平尾弘衆さん61歳(平成26年8月29日地元紙掲載)