朴念仁の戯言

弁膜症を経て

憲法9条 空洞化の危機

解説
集団的自衛権行使を可能とする憲法解釈変更が閣議決定され、戦後維持してきた抑圧的な防衛政策の転換が決まった。
与党協議は多くの論点を詰め切れないまま決着し、拙速の印象は免れない。
国民理解は置き去りにされ、憲法9条の理念は空洞化の危機にさらされている。
安倍晋三首相の責任は重い。
自国の守りに徹する専守防衛は1954年の自衛隊発足以来の基本方針だ。
一方、集団的自衛権は、他国への攻撃を自国攻撃と見なして反撃する権利。
自衛隊の活動は大きく変容し、初の武力行使に及ぶ可能性がこれまでより高まる。
首相は閣議決定後の記者会見で、中国などの軍拡などを念頭に、抑止力を強化する必要性を説いた。
外国を守るために日本が戦争に巻き込まれる事態は「あり得ない」とも言い切った。
だが国策の根幹に関わる大転換が国民不在の政府、与党の議論で進められたこともあり、説得力は弱い。
政府は集団的自衛権行使の歯止め策として「武力行使3要件」を設け、「国民の権利が根底から覆される明白な危険がある」場合に限定すると主張するが、曖昧さは否めない。
先の大戦の反省もあって9条への国民の共感は幅広い。
安全保障環境の変化に即した対応が必要と考えるなら真正面から憲法改正を問うべきではないのか。
手続きを省き、結論を急いだ首相の政治手法は立憲主義の観点から危うさを覚える。
公明党も姿勢転換の説明責任を問われる。
首相は「憲法が掲げる平和主義をこれからも守る」と明言する。
今後の国会論議を通じ、首相の真意を見極める必要がある。

平成26年7月2日地元紙掲載