朴念仁の戯言

弁膜症を経て

神の呼びかけ

旧約聖書の中には、神が度々、預言者たちに呼びかけて、なすべきことを示しておられる様子が記されています。

新約聖書では、「私についてきなさい」というキリストの呼びかけに応じ、12人の弟子たちはキリストに従いました。
パウロはダマスコへ行く途中で、「サウロ、サウロ」という呼びかけに回心し、偉大な使徒となったのでした。

司祭、修道者になった人々は、このような神の呼びかけに応じて、その道に入ったと考えてよいでしょう。
神は今も、私たちに日常生活の中で呼びかけておられます。

ある小学校の6年になる女子の一人が、次のような詩を書いています。

「王さまのご命令」
といって バケツの中へ手を入れる
「王さまって だれ」
「私の心のこと」

多分、寒い朝、雑巾をゆすいで、しぼらないといけない時の心の動きが、この詩に表現されています。
「いやだな」という気持ち、「でも、しないといけない。王さまのご命令だから」という、自分自身との会話。

実は、私たち一人ひとりの心の中にも、この〝王さま〟は住んでおられるのです。
ためらっている私たちに、善いことを「しなさいよ」とすすめ、悪いことを「してはいけません」と制止していてくださるのです。

神の呼びかけは、かくて電車の中で、高齢の方に席を譲ろうか、譲るまいか、嘘をつこうか、つくまいか、こぼした水を拭こうか、そのままにしておこうかと、ためらっている私たちに、どうしたらよいかを囁(ささや)いてくださっています。

この「王さまのご命令」に耳を傾け、従って、生きてゆきたいものです。

※シスター渡辺和子さん(平成27年7月24日心のともしび「心の糧」より)