朴念仁の戯言

弁膜症を経て

定年後の生き方

数年後に定年を迎える。 漠然と定年後の人生を考える。 定年後の75歳までを「黄金の15年」と言うらしい。 思い描いた、理想通りの素敵な生活を送ることができるなら黄金色にもなるだろうが、他人より秀でた才能、才覚もなく、また、何ら努力もしていない私に…

カレーライス

昨晩、うんこカレーを喰わされた。 父方の伯母が作った。 うんこカレーは丼ぶりに山のように盛られ、手にした時、その重さにたじろいだ。 丼ぶりを受け取った私を、伯母の甥や姪なのか、それとも孫なのかよく分からないが、何人もの子どもたちが取り巻いてい…

墓を参りて

先日、仕事で先人の墓地の管理状況を確認し、写真に収めることになった。 思い立ったら吉日と、よくよく天気の確認もせず、翌日の昼前後に出向くことに決めた。 その日、梅雨明けの酷暑に閉口しながら、この町の聖域の一つと言われる墓地を目指した。 駐車場…

自滅の道から

疫病蔓延、大規模水害、爆発事故・・・。 連日、映画のような世界が繰り広げられている。 いよいよ次は地球外生命体による地球侵略か。 近年における想定外の出来事が、最近そんな馬鹿げたことを思わせる。 映画の見過ぎか。 想定外という言葉は、確かホリエモ…

痛みも喜びも分かち合う

「経済とは本来、共に生き死にを分かち合う仲間が幸せに生きる条件を整えるもの」 「相互扶助や再分配の経済をつくり直し、皆で痛みも喜びも分かち合える社会を取り戻さなくてはいけない」 ※「欲望の経済を終わらせる」の著者・井出栄策さん 昨年、母と叔母…

後ろ髪

「行ってきます」「車の運転に気を付けるんだよ」 出勤時の私と母のいつものやりとり。母は必ず玄関先に出て私を見送る。母の視線を背に受け、私は「分かったよ」と返事をする代わりに片手を上げて車に乗り込む。いつもの光景。 この一瞬に想う。別離と公私…

慈しみの心

先日、職場で不織布マスクを確保しておこうという話になり、ネットで1,000枚注文した。それに便乗して、同僚皆で私用に追加注文した。世界的需要の多さから割高ではあったが、我が身、家族を守るためであればケチ臭いことは言っていられない。 昨日、テレビ…

7歳の誕生日に

一度死んで、また生まれることができて、昨日、小学一年生になった。間もなく国内の都市部では緊急事態宣言が発令されるだろう。 最近読んだ本で合点がいった。地球生命の理想的環境は大きな痛みが伴わないと為されないことを。理想的環境の出現は今から600…

今生の学び

先日、母のリハビリの帰りに近くの道の駅に寄った。昼頃を大分過ぎていたが、弁当を買うついでに夕飯のカレーの食材も買おうと野菜館を物色していた。すると、すぐ後ろを歩いていた母が急に咳き込み始めた。母のバッグからマグボトルを取り出し、「コロナ騒…

見えないもの

新型ウイルスは見えない。この見えないものに今人類は翻弄されている。 人の気持ちもそうだ。意識して見ようとすればかろうじて目の動き、顔の表情、仕種で読むこともできるが、完全ではない。 新型ウイルスは、「見えないもの」の存在を病状という形で姿を…

新型コロナウイルス感染拡大の意味するもの

新型コロナウイルスの広がりは社会に未知なる不安を齎しているが、地球には一時の優しい処方箋だろう。世界経済が足止めを喰えば二酸化炭素の排出も抑えられ、交流人口も少なくなり、交通機関の使用も限られる。地球にようやく訪れた一時の安息。調子に乗る…

沈黙を破る

「コルタン(タンタル)」という名を最近知った。ICT産業が世界を席巻するようになって、この鉱物資源の需要が増し、これが産出国の紛争とおぞましい性暴力を招く結果になったことも。世界で使用されるコルタンの約80%がコンゴ民主共和国のものだという。コ…

稲葉耶季さんの遺言

「いまを生きる16の知恵」生きることは楽しいこと、大きな意味のあることです。 ①川の水のように自然の流れに沿う②自分の中のかすかな息吹を感じる繊細さを持つ③他者と同じ息吹の中で生きていることを感じる④興味のあることに集中する⑤不安や恐怖を持たない⑥…

年頭に想う

新年だ。年の区切りとして目出度いことなのだろうが、これも人間界の出来事であって、自然界は何ら変わりなく、過ぎ行く時の概念も人間だけのものであって、自然界はただ「今」あるだけ。人間も肉を脱ぎ捨てれば、過去も現在も未来もなく、「今」あるだけの…

自学

そろそろテレビを消そうかと炬燵の上のリモコンに手を伸ばし、椅子に坐り直してテレビに向けた。「ボクの自学ノート」テレビ画面に浮かび上がる文字。丁度、何かの番組が始まる時間帯だった。「自学」の文字に好奇心が湧き、リモコンを手にしたまま、また椅…

ステージ4

前回の「今この瞬間を共に生きる」と同じ紙面に、ぼうこうがんの手術から丸5年の節目を迎えたボクシング元世界ミドル級チャンピオンの記事が載っていた。人間は死ぬほどの(身体的にも精神的にも)痛い思いをして、初めてそこから本当の人生が始まるというが…

今この瞬間を共に生きる

一昨日から二日間、陋屋の庭の雪囲いに追われ、昨日の夕方にようやく終えた。後片付けをしながら夕陽が沈んだ先の山並みの稜線に目を向けると、初冬の大気は橙色から瑠璃色の濃淡へと鮮やかな変化を見せ、その先を目で追っていくと、澄み渡る瑠璃色の天空に…

見えない愛

昨年6月に東海道新幹線で乗客3人を殺傷した男(23歳)の初公判の記事が、今朝の朝刊に載っていた。男は、一昨年の12月に祖母の家を出た後、公園で野宿して過ごすうちに「社会で一人で生きていくのは難しく、刑務所に入りたい」と思うようになったという。「…

白鵬のあがき

意識して行っていようが、取組前の控えから土俵に上がっての所作が礼法のように一番整っている力士は白鵬だろう。横綱の風格が漂う。だが、勝ちに徹した取組は時に汚い。 今日、手負いの御嶽海に、よもや張り手やかち上げはないだろうと見ていたが、意に反し…

道化師

「健全そうな顔をしていても、多くの人が精神のきしみやたわみを抱えている。誰にも何らかの欠落や過剰なものがあり、どこかが狂っているというところから始めなければいけないのではないか」新刊出版に際して地元紙に掲載された作家・辺見庸氏の言葉が、昨…

苦悩の末に

私は23歳でマタギの世界に足を踏み入れたが、初めから自然や、自然との共生のことばかりを考えていたわけではない。むしろ、狩猟を楽しむ気持ちのほうが大きかった。転機となった出来事がある。30代後半ごろ、有害鳥獣の駆除で仲間と一緒に春先の山に入った…

緒方貞子さん「人間らしい心」

緒方さんとの交流のうち、強く記憶に刻まれていることがある。私がUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)の駐日代表だった2007年、難民問題に関する緒方さんのインタビューが英字紙に掲載された。緒方さんは記事の中で、難民受け入れに消極的な日本の対応につい…

月の満ち欠け

先日、書店で久しぶりに本を購入した。2時間近く物色し、あらかた買う本を定め、あと一冊買うかどうか迷っていた。三巡目だったろうか、もう一度手に取り、出だしの文章に目を通して、「ものは試し」とそのままレジに進んだ。買うことにしたのは岩波文庫の装…

人類の覚醒

「私が伝えたいことは、私たちはあなた方を見ているということです。そもそも、すべてが間違っているのです。私はここにいるべきではありません。私は海の反対側で、学校に通っているべきなのです。あなた方は、私たち若者に希望を見いだそうと集まっていま…

無意識の呼吸

今日は予定通りに休暇が取れ、庭先の、ほったらかしにしてあるミニトマトのジャングルのような枝ぶりを眺めながら物思いに耽っていた。少し前まで頻繁に訪れ、庭内を優雅に舞っていた揚羽蝶の姿はそこにはなく、代わりに蟋蟀たちの鳴き声が深まりゆく秋の気…

想いは届いたか

一昨日、亡くなったOさんに会った。自転車を押したOさんが、突如、私の横に現れたのだ。Oさんは、私が出会った頃の、男盛りのふっくらとした顔立ちで、身体全体が発光しているような白い輝きを纏っていた。 「何か俺に言いたかったのか」Oさんはいつもの柔和…

感謝の言葉

7月22日、Oさんが亡くなった。享年72。 今朝のお悔やみの欄で知った。突然の訃報に驚き、到頭来るべきものが来たかと虚無の風が体を通り抜けた。 人生の節目節目でOさんには感謝の言葉尽きぬほどお世話になった。大学進学時、上京してのアパート探しと引っ越…

篩(ふるい)

今年3月に同級生Sが亡くなった。数年間の闘病生活。再々発の白血病だった。 今日、郵便局で同級生Aに会った。Aは配送専門でトラックの中から声を掛けてきた。「Eが死んだの知ってっか」藪から棒にAは言った。「なに!」「去年の12月だ。ネットで名前検…

母の日に なんにもしない それがうち

「母の日に なんにもしない それがうち」-。兵庫県篠山市立岡野小学校4年生の青木舞佳さん(10)の詠んだ俳句が、「第12回佛教大学小学生俳句大賞」の高学年の部で選考委員特別賞に選ばれた。応募総数2万句を超える中での受賞。「嘘はつけないし、普通に思…

今生の課題

蟲が身体に棲息するようになったのは何時頃からか。 蟲が動き始めると訳の分からない感情が湧き起こる。些細な事に不機嫌になり、沸々と怒りを覚え、口を閉ざす。そして、寄らば斬るのベールを纏う。そのベールを払い除け、他人がズカズカと入り込めば、すか…