朴念仁の戯言

弁膜症を経て

想いは届いたか

一昨日、亡くなったOさんに会った。
自転車を押したOさんが、突如、私の横に現れたのだ。
Oさんは、私が出会った頃の、男盛りのふっくらとした顔立ちで、身体全体が発光しているような白い輝きを纏っていた。

「何か俺に言いたかったのか」
Oさんはいつもの柔和な表情を顔に浮かばせて私に訊ねた。
「感謝の、御礼の言葉を伝えたかった」
私がそう言うとOさんは、
「そうか」とだけ言った。

その時、Oさんの建設会社の跡を継いだ息子は大丈夫なのだろうか、と一瞬脳裏をよぎった。
すると、Oさんはそれを見透かしたかのように、私の身体を通り抜けてその背後にある何かに視線を送った。
Oさんの視線に釣られて後ろを振り返ると、目の前にOさんの建設会社が立ち現れ、会社の駐車場には紺色のジムニーや白い乗用車10数台が駐車してあった。
それは会社が活況を呈していることを私に悟らせた。
心配するな、と言うことか。

そして、目が覚めた。