朴念仁の戯言

弁膜症を経て

善良さと冷酷さ 

スズメの愛らしさは、誰もが認めるところだと思います。
しかし、信じ難いような冷酷性も併せ持っていることを知っている人は少ないかもしれません。
それは、ツバメに対する姿勢に象徴されます。
ツバメの巣は、短工期で作られた粗雑なスズメの巣とは比べものにならない、立派なものです。
スズメにとっては、きっと高級マンションに思えるのでしょう。

そこでまずスズメは、ツバメ夫婦の行動をじっと偵察した後、集団で数日にわたる猛攻を仕掛けます。
卵を破壊し、時にはひなを地面にたたき落とします。
結果的に、ツバメの巣はスズメ集団に占領されてしまい、ひな、そして卵まで失ったツバメ夫婦は、遠巻きにかつてのわが家を寂しく眺めるのみなのです。

スズメの愛らしさを、「善良」という言葉に置き換え、自分に当てはめてみた時、自分の体と心にも間違いなく善良さとこれに相反する冷酷さが同居し、スズメのレベルと大差ないことに気付かされることがあります。
それは、毎年、ツバメの季節がやってきた時です。

福島市の安藤洋康さん76歳(平成30年9月27日地元紙掲載)