朴念仁の戯言

弁膜症を経て

現世は一時の足留め

シカは、英世と再会して3年後の大正7年11月10日に世界的に流行したインフルエンザにかかり亡くなった。
そのことを知った英世は翌年の2月に恩師小林にその思いを手紙にした。

「3年前に母と別れた時に、母はいつ死んでも心残りは多くないと申しておりました。生と死との境はこの世のことだけで、生前と死後とのことを考えてみると、現世は単に一時の足留めに過ぎないと感じております」
「母が亡くなったことで精神の動揺はありませんが、ひたすら慈母の教訓及び意志を守って、出来るだけこの世の為に尽くすことをお誓い申し上げます」
大正8年2月18日)

シカがいつも考えていることを、英世はこのように理解していたのであろう。

※元野口英世記念館学芸員の小檜山六郎さん(平成30年8月25日地元紙掲載)