朴念仁の戯言

弁膜症を経て

クリスマスとは

クリスマスとは、イエス・キリストの誕生を祝う日です。
11月ともなれば街中にキャロルが流れ、電飾に輝くツリーが人々の目を引きます。
キャロルの中でも、一番人々に愛され、歌われているのは、「静けき真夜中」ではないでしょうか。

ところが、この歌がいつ頃、誰によって作詞、作曲されたかを知る人は、案外少ないようです。
私も、この度、クリスマスについて書くようにと言われて勉強しました。

それは今から200年ほど前のクリスマスの夜のことでした。
オーストリアのある小さな町の主任司祭ヨゼフ・モールは途方に暮れていました。
教会の古びたオルガンは、もはや音を出さないほど壊れてしまっていたのです。

深夜、ミサに信徒たちが集まってくる時間は近づいていました。
オルガンなしで歌える歌を新しく作ろうと考えた司祭は、数日前に生まれたばかりの幼な子を祝福するため訪問した家族を思い出したのです。
寒さから守るために、産着にくるまれた幼な子と母親の姿。

すると、どうでしょう。
歌の言葉が天から降ってきたかのようにモールに与えられたではありませんか。
出来上がった歌詞を持ってモールは近所の音楽教師である友人、フランツ・グルーバーの家に駆け込み、ミサの直前に、ギターでも歌える「静けき真夜中」が完成したのでした。

苦しみの中、友情に助けられて生まれた聖歌は、瞬く間に世界中に広まりました。
一方、その作詞作曲のエピソードは、160年もの間、知られていませんでした。

それはちょうど、貧しき中で、人々に知られることなく生まれ育ったキリストの誕生を祝う歌としては、誠にふさわしいものだったと言えるのではないでしょうか。

※シスター渡辺和子さん(平成27年12月19日心のともしび「心の糧」より)