朴念仁の戯言

弁膜症を経て

つながり

「愛は溢れゆく」と言われています。

一人の長距離トラックの運転手が、自分の体験を投書していました。

「その日、自分は夜っぴて運転し続けて、あと少しで目的地に到着するはずでした。朝の7時頃だったでしょうか、目の前を一人の小学生が、黄色い旗を手にして横断歩道を渡り始めたのです」

運転手は疲れもあったのでしょう。
忌々(いまいま)しく思い、急ブレーキをかけてトラックを止めました。
すると、その小学生は横断歩道を渡り終えた時、高い運転台を見上げて、運転手に軽く頭を下げ、「ありがとう」と言ったそうです。

「私は恥ずかしかった。そして決心したのです。これからは横断歩道の前では徐行しよう。そして、もし道を通る人がいたら、渡り終えるまで待ち、笑顔で見送ろう」

ほほえみ、優しさ、愛は、このようにつながってゆき、溢れてゆくのです。
運転手に笑顔で見送られた人は、嬉しくなって、多分、言葉も、態度も、その日一日優しくなったことでしょう。

マザーテレサが言われました。
「自分がしていることは、一滴の水のように小さなことかも知れないが、この一滴なしには大海は成り立たないのですよ」
さらに、「自分は、いわゆる偉大なことはできないが、小さなことの一つ一つに、大きな愛を込めることはできます」

小学生の笑顔と、「ありがとう」の一言は、それ自体は小さな行いです。
しかし、それが次の人につながっていって、相手の心を優しくし、その優しさが溢れていって、社会に、家庭に、平和をつくり出してゆくのではないでしょうか。

※シスター渡辺和子さん(平成29年4月29日心のともしび「心の糧」より)