朴念仁の戯言

弁膜症を経て

壁を乗り越える

「今の子どもたちは打たれ弱い。その理由の一つとして考えられるのは、この子たちは海で泳ぎを習わず、プールで習ってきているからだ」と言った人がいます。
つまり、波にぶつかる機会がないまま育ってしまったために、世間の荒波にぶつかった時に対処できないのだということでした。

道路についても同じことが言えます。
今やほとんどが舗装されていて、デコボコの道、泥んこの道、石ころ道を歩くことは少なくなりました。
しかしながら、私たちの一生は決して平坦な道ばかりではなく、波風の立たない、適当に温度調節されたプールでもないのです。
たくさんの障害物が立ちはだかり、行く手を塞ぐ壁となっています。

育っている間、したいことは何でもさせてもらい、したくないことはしなくてもいいと、そして、それが〝自由〟であるかのように育てられてしまった子どもたちは、壁にぶつかった時にどうしてよいかわからず、落ち込んだり、生きる勇気まで失ってしまうことがあります。

〝壁〟というものは、人間が成長するためになくてはならないものなのです。
世の中の厳しさを知るために、何もかも自分の思い通りに行かないことに気づくために必要なものなのです。

今まで持っていた自分の価値観と異なる価値観があることに目覚め、自分を振り返り、自分の生き方、主義主張を見直す良い機会ともなります。

〝壁〟は、必ずしも乗り越えないといけないものばかりではなく、必要な存在でもあるのです。
世の大人はもちろんですが、親、教師の立場にある人こそ、愛情をこめて、子どもの壁になるべきだと考えています。

※シスター渡辺和子さん(平成29年4月28日心のともしび「心の糧」より)