朴念仁の戯言

弁膜症を経て

自律神経バランスよく

健康を左右 自分でコントロール可能
健康はバランスで決まる―。一瞬の判断と処置が患者の命に関わる外科手術の経験から、順天堂大学医学部の小林弘幸教授は自律神経の重要さを実感し、研究を続けてきた。「自律神経は身体の危機管理システム。自律神経をコントロールできれば、自分の人生がコントロールできる。健康の鍵を握るのは特に副交感神経だ」と指摘する。小児外科が専門。便秘外来やスポーツ医学、医療訴訟も手がける。最近は自律神経のコントロール法を書いた『なぜ、「これ」は健康にいいのか?』(サンマーク出版)を出版、売れている。自律神経について小林順天堂大教授に聞いた。

―出発点は外科手術?
「自律神経がすべてをコントロールするというのが外科の感覚。手術前にいくら頭で『大丈夫だ、大丈夫だ』と思っても手が震えることがある。それなら頭でなく、手を震えないようにするにはどうするかを考えた」
―メンタルトレーニングもあるが。
「いくら脳で考えても、自律神経が乱れたらどうにもならない。逆に、自律神経さえ調整できればメンタルは放っておいていい。メンタルがついてくる。自律神経が安定している人間はびくともしないし、焦りもしない。自律神経が乱れていると判断力がまず落ちる」
―データで分かる?
「心拍変動解析で3分間測れば、自律神経の状態が全部データで分かる。指先や耳たぶにサックのセンサーを付けるだけ。実際、呼吸や笑い、香り、音楽などは、副交感神経が上がる(リラックスする)反応が出てくる。それは、これまでもみんな分かっていた。きれいな花やいい音楽とか」
「例えば、パニック症候群の人は交感神経が絶対的優位と出る。うつ病の人、疲れている人なども自律神経のバランスを見ると分かる。スポーツ関係では、オーバートレーニングは自律神経のトータルパワーが下がってくる。選手には、駄目なときは『駄目』と言わなくてはいけない
―一番いいときは?
「スポーツだけでなく、体が最も良い状態で機能するのは、実は交換、副交感神経両方が高いレベルで均等に活動しているとき。また自律神経のバランスが悪いときは何をやっても駄目。現在、トッププロから五輪選手まで診ている。データを見せて、結果や体調、モチベーションと相関しているか、チェックしている」
―コントロール法は?
「自律神経のバランスを意識的に整えることで、すべての状況が変わる。コントロールする方法を一言で言うと『ゆっくり』。『ゆっくり』を意識し、ゆっくり呼吸し、ゆっくり動き、ゆっくり生きる。すると、下がり気味の副交感神経活動レベルが上がり、自律神経のバランスが整い始める」
―便秘外来では何を?
「便秘は腸内環境と密接に関係している。腸は第2の脳と言われるくらい重要な役割を果たしているが、腸内環境が悪いと自律神経の乱れにつながる。便秘は、腸内環境を整えるという基本さえ押さえれば9割方治る。この本を読んでくれれば遠方から東京に出てくる必要なはないと思う」
平成23年8月26日地元紙掲載