朴念仁の戯言

弁膜症を経て

葬儀日に届いた父の検体申込書

父への検体の申込書が届いたのは葬儀当日だった。近所の人に相談したら「おれたちには関係ない。家族で決めろ」とのことだった。「無駄な慣習はやめ、世のために何か尽くしたい」というのが父の遺志だった。気が動転している家族で即決できるわけがなく、父は火葬された。
予想を超える葬儀代の請求書にがくぜんとし、また、父の遺志をかなえてあげられなかったことを悔やみ、そして命の終わり方を考えておくのに早過ぎることはないと痛感した。
それにしても医療費や保険税の高騰で若者に負担をかけることを憂い、生涯通院しなかった父を裏切り、救急車を呼んでしまった。
そして父は多忙で粗雑な看護を受け逝ってしまった。父を殺したのは私かもしれない。

(主婦・門馬貴子さん46歳)平成20年12月8日地元朝刊投稿