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朴念仁の戯言

弁膜症を経て

大切な庭の仲間

『オーガニックガーデンのすすめ』6 梅雨のひと雨ごとに、ぐいぐいと成長する草木。目を凝らせばこの時期、葉の裏に、枝の陰に、いろいろな虫がやって来る。虫を嫌う人は多いが、虫を知ることはオーガニックガーデンづくりの第一歩。人間以外の生き物の声が…

夢野久作の歌といま

『水の透視画法8』幻夢かすめる通り魔 「殺すくらゐ 何でもない/と思ひつゝ人ごみの中を/闊歩(かっぽ)して行く」。高校の授業中に、こんな歌がのった本を教科書の下にかくして、どきどきしながら読みふけったことがある。「何者か殺し度(た)い気持ち…

爺様支える老猫

『動物病院の四季6』ヒゲ獣医師の診療日誌 夏の最後を焼き尽くす太陽が朝からまぶしい。爺様(じいさま)がオンボロ自転車をキーコ、キーコと鳴らしてやって来る。老猫のタマは、荷台にくくり付けた段ボール箱から悠々と顔だけを出し、逃げようともしない。…

青い炎

『水の透視画法7』サテンの手とことばと 月に二、三度とはいえ、もう一年も家にきてもらっているというのに、この人にはいまひとつえたいの知れないものを感じてしまう。駅のむこうから1.5㌔ほどの道のりを、体操着姿の彼はバッグ片手にすたこらかけ足でく…

中身は〝母の愛〟

宅配扱い丁寧に 「みんなのひろば」に「心も送る宅配便 手荒な扱い残念」という投稿が掲載されていました。本当にそう思います。娘が転勤先に住んでいた時のこと。正月の餅やこしあんなどを宅配便で送りました。しかし、届かないと言うのです。宅配業者に問…

恥じを知れ

恥(は)ずること無(な)かる可(べ)からず人不可以無恥『孟子』※平成20年6月2日地元朝刊「金言名言」より。 孟子曰人不可以無恥無恥之恥無恥矣 孟子曰(い)わく人は以(もって)恥ずること無かる可からず恥ずること無きを之(これ)恥ずれば、恥無し 人…

節句

『日本人の美学5』 わが国には昔から五節句を祝う行事があります。近ごろではこの行事を考え違いしている人が多いようです。節句は一年間に五回あります。一月一日「正月」、三月三日「ひな祭り」、五月五日「端午」、七月七日「七夕」、九月九日「重陽」。…

プレカリアートの憂愁

『水の透視画法6』袋小路の疲れと屈折 皮膚からみずみずしさが消え、顔がいやに骨ばって、濃くくまどったようになっている。眼(め)はこころなしか黄色くかわき、よれた疲労感をただよわせていた。大学で客員教授をしていたときの教え子と四年半ぶりに会っ…

医師の嘆き 自業自得

『医療漂流5』萎縮の現場から ※平成20年4月25日地元朝刊より。 神奈川県大和市にある大和成和病院は、中規模ながら心臓血管外科の分野で高い専門性を持つ医療機関として知られる。院長の南淵明宏医師(50)が手掛ける心臓外科手術は年に200例近く。国内で突…

出会うこと

私の焼き物の原点は天目茶碗にあります。二十代の終わりごろ、NHKで曜変天目茶碗が放映された時、宗像窯伝来の鉄釉(てつゆう)の中にこれに近い輝きを見た記憶が蘇り天目茶碗への挑戦が始まりました。天目茶碗は天目型と言われるすっぽん口、御猪口(おちょ…

家族の原風景

『動物病院の四季4』ヒゲ獣医師の診療日誌 澄み渡る青空の美しい朝であった。僕の大好きな鈴木一家が、先週出産したばかりのマルチーズのアイを連れてやって来た。「先生、アイがだいぶ疲れている。点滴してやったらと思ってな」と父さん。「ここんところ毎…

不都合な他者について

『水の透視画法4』人の海で「愛」を問う ステージ中央にひとりになった。断崖(だんがい)におきざりにされたように心ぼそい。舞台上のスポットライトをひとつだけのこして、ホールの照度がすべて落とされると、客席はまるで月のない夜の海原である。さっき…

温暖化の進行、生態系直撃

『環境省予測 ガス削減の必要性示す』※平成20年5月地元朝刊より。 地球温暖化が進むと今世紀中に西日本を中心にコメの減収が深刻化、高潮被害の増加やブナ林の減少など日本の生態系や暮らしに大きな影響が出るとの予測の結果を環境省が29日、発表した。国内1…

知ったかぶりの戒め

知之為知之(之を知るを之を知ると為し)不知為不知(知らざるを知らずと為す)是知也(是知るなり) ※平成20年5月27日地元朝刊「金言名言」より。 孔子が血気盛んな弟子・子路(由)に教え、戒めた言葉。「由よ、おまえに知るということはどういうことか教…

くぐもる「個」の沈黙

『水の透視画法3』乳白色の暗がり ガラスばりのカフェにすわり、バス道路にできた不思議な銀色の水たまりを、まばたきしながら見ていた。水たまりは妖(あや)しい光芒(こうぼう)をあげて左右にゆらめいている。逃げ水だ。手前の横断歩道でも光が屈曲し、…

時ならぬ人と虫たち

『水の透視画法2』永久凍土のとける音 歩道わきの枯れ草のうえを、うす緑の、か細く小さな虫が一匹はい動いていた。立春からまだ日もあさい昼下がり、ゆうちょ銀行にいく途中だった。眼(め)の錯覚かな、と腰をかがめてみると、羽化後まもないらしいカマキ…

飼い猫と野良猫のはざま

「動物病院の四季3」ヒゲ獣医師の診療日誌 私は手術助手の家内を相手に当たり散らしている。別段、家内に腹を立てているわけではない。体重5㌔もあるメス猫の避妊手術の最中なのだ。皮下脂肪は厚いところで1㌢を超え、おなかは脂肪組織で満たされている。…

栴檀の大樹の下で

『水の透視画法 1』ゆらめく善悪の影絵 にび色の午後のことだ。いつもの散歩コースをはずれて、小学校の正門にさしかかったら、いきなり高音域の声がはじけ、子どもたちがパチンコ玉みたいにばらばらと飛びだしてきた。てんでにちがう服なのに、みんながカ…

優しくなったお父さん

ブログのネタは新聞切り抜きからとしたが、ネタも何も引用そのままになってしまった。それでもいい。これを読み返せば当時の自分に会える。何を欲し、何を目指していたのか。自分を探るに良い機会だ。 タイトル「動物病院の四季」、サブタイトル「ヒゲ獣医師…

息子を失くして亡母の言葉痛感

今、母親と同じ年ごろになって母のあのときの言葉が昨日にように思い出されます。母は長男と次兄が亡くなったときは気も狂わんばかりに毎日、毎日泣いてばかりのいたのです。そのとき私が、「そんなに悲しいの。代わりに私が死ねばよかったのにな、母ちゃん…

お正月

お正月 二ねん 野上房雄 お正月にはむこうのおみせのまえへキャラメルのからばこひろいに行く香里の町へえいがのかんばん見に行くうらの山へうさぎのわなかけに行くたこはないけど たこはいらんこまもないけど こまはいらんようかんもないけど ようかんはい…

出会い待つ旅 始まる

「成人の日」エッセー 1976年5月、20歳になる一カ月前、僕は東京・吉祥寺の井の頭公園のベンチに座っていた。高知という片田舎から期待に胸を膨らませて上京した人間にとって、学園紛争後の東京の空気はやけに空々しく、まして自分の将来の見取り図が描けな…

いつだって人生やり直し

昨年末のテレビ番組に覚醒剤で捕まった清原和博が出演していた。自業自得と言えど覚醒剤使用から逮捕されて独房入りするまでの状況と、そして、涙ながらに「息子に会いたい」と話す清原の哀しい姿。 その映像から目を離すことができず、言いようのない感情が…

宇宙の法則

「この世界に異変が来ていることに、多くの人が気づいているらしい」 この書き出しで、タイトル「マトモではない現代」は始まる。筆者は、東大名誉教授(平成19年9月現在)の養老孟司さん。 「虫の異変について、私がいいたいことは簡単である。世の中の現象…

言葉の力

正月三が日も過ぎ、平常の生活に戻って年初の投稿。 何を書こうか、前回の「日雇いの夢」の裏話にしようか、つらつら考えた挙句、新聞の切り抜き記事をネタに書こうと決めた。 10年前の1月20日の地元紙サロンから、タイトルは「ありがとうの不思議な力…

日雇いの夢

電車の窓から空を眺めると、なぜか田舎を思い出す空は田舎に繋がって、おれはひとり明日のために働いて3年何やってんだ、おれは中学ん時の夢追いかけて、八方塞がりになって、投げやりになって、人に迷惑かけてもまだ覚めねえ田舎で安い給料で働いて家族養…

今月8日に

今月の8日、天皇陛下は国民に異例の「お気持ち」を表明された。「象徴とは何か」憲法第1条に、「天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であって、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基づく」とある。憲法に象徴行為を示す具体的な規定は為さ…

気難し屋

「ご無沙汰だな。体調どうだ」Hの遠慮ない声を耳にし、同級生の気安さを感じながらも勤務中に掛かってきたせいか、外づらと内づらの切り替えがすんなりいかず、変に身構えてしまい、それはぎこちない声音となって表れた。「おう、久しぶりだな。変わりねえ」…

天の涙

職場での昼休み、イヤホンを通して流れる音楽を聴きながら図書館から借りた本を読む。外界の雑音を遮断して自分の世界に入ると徐々に安息の時が入り込んでくる。目にはアリステア・マクラウドの「冬の犬」。耳にはエリック・クラプトンの「Tears In Heaven」…

輪廻転生

椎名誠著の「ぼくがいま、死について思うこと」の巻末の、少し長いあとがきに二十歳の時に自死した友人Nのことが書いてあった。 車で子どもを撥ね、大怪我をさせてしまい、Nは自責の念から縊死した。 遺書には子どもへの詫びと悔恨の言葉、そして「死にた…

老いの行方

車をバッグして玄関前に乗り入れると、M伯父が丁度玄関口に出て来た。 伯父は目を見開き、びっくりしたような顔で私たちを凝視した。 「Mさん、元気だったがよー」 車の窓越しから母が訊ねた。 「あれ、誰だっけ、あのー、うー」 伯父は言葉にならない言葉…

銀色のはるか途上に試練あれ 

「遠い遠い はるかな道は冬の嵐が 吹いてるが谷間の春は 花が咲いてるひとりひとり 今日もひとり銀色のはるかな道」 仕事帰りにいつもの道を走らせていると、ラジオから懐かしいメロディに乗って淡々と歌詞が流れてきた。春の歌の特集らしい。春は、旅立ち、…

耳で見て 目で聞き 鼻で 物食ふて 口で嗅がねば 神はわからず

宮本信子主演の「ミンボーの女」だったか、老婦人がスーパーで手にする食品を次々と指で押し潰すシーンがあった。 実は母がこれに近いことをやる。 その度に私は、「買いもしないのにだめだよ、握っては」と強い口調で窘める。 すると母は、「つい握りたくな…

「保育園落ちた日本死ね」に想う

こういう言葉を吐かないと世論、国は動かないのか。 新聞でこの罵声の文字の羅列を見た時、発信者のヒステリックさが伝播し、胸糞悪くなった。 感情を吐き出したい事情はよく分かる。 事情は分かるが、ちょいと待てよ、と思う。 激情に任せた言葉が独り歩き…

夢幻

晩飯後の、燗酒で和らいだ身体を炬燵に滑り込ませ、見るともなくテレビを眺めていた。 次から次へと歌い手が登場し、持ち歌を歌っていた。 潮が知らぬ間に海辺を満たすかのように懐かしさが込み上げてきた。 もう二度と戻ることの出来ないその時代の自分も、…

路上文学

いつもの朝、生キャベツをむしゃむしゃ喰いながらテレビを見ていたら「路上文学賞」の文字が画面に浮かんだ。 はじめて耳目に触れる言葉。 どうやらホームレスが書いた作品らしい。 大賞作品が決まったとか、作品名が紹介された。 作家の、星野智幸の顔が映…

男の終い仕度

「もっともっと生きたいように生きるべきではないか」 その言葉通り生きた安藤昇が十六日、肺炎で亡くなった。 やくざから俳優に転身し、晩年は気の向くままの執筆稼業。 やくざ時代全盛時には組員千人を束ね、その中には素手ゴロ最強と謳われた花形敬や、後…

火の車

金の工面に困窮している状況を火の車と言うが、本来は仏教語で火車(かしゃ)と言い、地獄で死人を運ぶ、火の燃えている車を意味する。 この世にはその乗り手がうようよと、どこまでも切れ目なく列なして待っている。 どの辺に私は並んでいようか。 それとも…

お布施

チリーン、チリーン。 職場での昼休み、どこからともなく鈴の音が聞こえてきた。 読んでいた本から目を離して聞き耳を立てた。 ラジオから流れてきたのか、スピーカーのほうを見やると目の端に正面玄関に立つ人影が映った。 玄関口を正視すると網代笠の僧侶…

死ぬということ

野球のユニフォーム姿の写真が新聞に載った。 野球帽の下には穏やかな人柄を思わせる笑顔があった。 それから数十年後、その笑顔の主は新幹線の車中で自らの手で71年の人生の幕を閉じた。 一人の女性を死に追いやったことも知らずに。 高齢者の犯罪は以前…

ひとり挽歌

酷だよなぁー、生きるぅーのは オレの将来(さき)はどうなるやら どんなにつらくても、苦しくても この身が参るまで生きにやぁならん 何を頼りに生きりゃいいー もぉーどうぉーにでもなりやがれぇー 何もかもぶち壊せー すべてなくなっちまえー 疲れたよぉ…

魂の浄化

田舎に帰ると優しくなれる、弟はそう言って頬を緩ませた。 明日は帰るという日、夕食時から弟の様子は違っていた。 寄せる感情を咀嚼しては呑み込む、その反芻の只中にいるものか、いつもより言葉少なだった。 幸せと嬉しさと、哀しみがごちゃ混ぜになってる…

色欲

先月の休日勤務時、仕事で付き合いのあるKが予告なしに職場を訪ねて来た。 Kは、社員駐車場に私の車を見掛けたから寄ったと言った。 Kの与太話には付き合いたくなかったが、気持ちを切り替え、席を勧めた。 珈琲は、と訊くと、大きくかぶりを振り、いいよ、…

生き方

「人」と「間」が合わさって人間。 人間は、覚者であろうと悪党であろうと誰一人として自己以外の他者と係わりなしに社会生活を営むことはできない。 その係わりは、他者を憎悪することでも、怒りを向けることでも、制裁を科すことでも、況してや殺すことで…

人の哀しさ

「普通、普通って、何が普通なんだ」って言うんだよ。 そんな言葉が母と妹の会話から聞こえてきた。 妹の夫が何かの折に口にしたらしい。 義弟と同じように私も普通という言葉には久しく違和感があった。 普通、または常識という言葉。 何を、誰を基準にして…

入学式

「今日は小学校の入学式だ」 今朝、新聞を読んでいると誰に言うわけでもなく口を衝いて出た。 するとそれに応じるように、 「あーそうか、母ちゃんも入学式のとき、写真撮りに行ったなあー」 室内の物干し竿に洗濯物を掛けながら、間もなく古希の年齢に達す…

日本の美

春彼岸前、仕事で年に一度だけ会う人がいる。 「人生七十古来稀なり」の人たち。 皆、郊外に住み、中には今では山国の地でも珍しい囲炉裏を備えた古民家に住む人もいる。 家族構成はまちまちだが、古民家に住まう男性は一人暮らし。 長年、東京で仕事をし、…

閃輝暗点(せんきあんてん)

仕事帰りに給油を済ませ、いつもの田園風景の中を夕陽に向かって車を走らせていると、突如眼の端のほうからチカチカと稲妻状に点滅するものが現れ、視界を妨げ始めた。 身体の異変を不安がるよりも見えないものが見えるようになったかと、その後の展開を楽し…

詐欺

「なんで騙されんだべ」 今朝の母のひと言。 「なりすまし(オレオレ)詐欺」の被害に遭った男性の新聞記事を見て、口を衝いて出たのだ。 被害額は200万円。 新聞やテレビで毎日のように報道されているのに何故こうも騙されるのか、不思議でならなかった。 …

足の裏的な人

前回の「学歴無用論から」を読み返して、その表現の出元を探ってみた。 〈足の裏のような人〉は、どうやら仏教詩人の坂村真民の詩に起因していたようだ。 自らの考え、自らの言葉と思っていたものは、実はその多くが今は亡き人たちが遺していってくれたもの…