朴念仁の戯言

弁膜症を経て

雑感

夢うつつに

何故ここに居るのだろう。 通勤途中、車窓から見える田んぼ一面の雪景色に心浄められて、ふと思う。 夢うつつに漂い、少しずつ自分の存在が消えていくような不思議な感覚に包まれながら。 私が仕組んだ虚構の世界。 信号が青に変わり、現実に引き戻される。 …

墓を参りて

先日、仕事で先人の墓地の管理状況を確認し、写真に収めることになった。 思い立ったら吉日と、よくよく天気の確認もせず、翌日の昼前後に出向くことに決めた。 その日、梅雨明けの酷暑に閉口しながら、この町の聖域の一つと言われる墓地を目指した。 駐車場…

痛みも喜びも分かち合う

「経済とは本来、共に生き死にを分かち合う仲間が幸せに生きる条件を整えるもの」 「相互扶助や再分配の経済をつくり直し、皆で痛みも喜びも分かち合える社会を取り戻さなくてはいけない」 ※「欲望の経済を終わらせる」の著者・井出栄策さん 昨年、母と叔母…

後ろ髪

「行ってきます」「車の運転に気を付けるんだよ」 出勤時の私と母のいつものやりとり。母は必ず玄関先に出て私を見送る。母の視線を背に受け、私は「分かったよ」と返事をする代わりに片手を上げて車に乗り込む。いつもの光景。 この一瞬に想う。別離と公私…

見えないもの

新型ウイルスは見えない。この見えないものに今人類は翻弄されている。 人の気持ちもそうだ。意識して見ようとすればかろうじて目の動き、顔の表情、仕種で読むこともできるが、完全ではない。 新型ウイルスは、「見えないもの」の存在を病状という形で姿を…

新型コロナウイルス感染拡大の意味するもの

新型コロナウイルスの広がりは社会に未知なる不安を齎しているが、地球には一時の優しい処方箋だろう。世界経済が足止めを喰えば二酸化炭素の排出も抑えられ、交流人口も少なくなり、交通機関の使用も限られる。地球にようやく訪れた一時の安息。調子に乗る…

年頭に想う

新年だ。年の区切りとして目出度いことなのだろうが、これも人間界の出来事であって、自然界は何ら変わりなく、過ぎ行く時の概念も人間だけのものであって、自然界はただ「今」あるだけ。人間も肉を脱ぎ捨てれば、過去も現在も未来もなく、「今」あるだけの…

二人の患者

また厄介な病を抱えてしまい、総合病院の消化器科に通う羽目になった。 診察予約の日、待合室に向かうと、外科室から出てきたばかりの男と移動用ベッドに横たわった婦人が目に入った。もう一人、看護師のような病院服を着た、ずんぐりむっくりの婦人の姿もあ…

平らか成る年から

東日本大震災から8年。弁膜症の手術で再び生を与えられて6年。 朝に道を聞かば、夕べに死すとも可なり 新元号を迎える今年、ありふれた日常と思いがちな砂漠化する想いに侵食されないよう、何気ない情景、何気ない人との出会いに気付きを得よう。清らかな水…