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朴念仁の戯言

弁膜症を経て

見えない力

「これで終わったな」14日目の鶴竜戦で力なく土俵を割った姿にそう思った。大方の国民もそう思っただろう。稀勢の里の優勝は消えたと。13日目の日馬富士戦で手痛い一敗を喫した上に致命的な怪我を被(こうむ)った。痛みでその場を動くこともできずに顔…

偏見に立ち向かう

植物の受精の講義をしたら、少女たちの前で性の話をしたようにすり替えられ、博物館長のいすを失ったのはフランスの昆虫学者ファーブルだ。1823年貧しい農家に生まれ、独学で教員免許を取得、教育界で力を付けてきたのを快く思わない師範学校出身者らが仕組…

社会性が生みだした長寿

霊長類学者 山極 寿一(やまぎわ じゅいち)さんが語る 霊長類で「老い」がはっきり見て取れるのは、人間だけですから。「おばあちゃん仮説」というのがあってね。雌が「自分の繁殖をやめて娘、息子、若い世代の繁殖を手伝って、孫世代の生存価を高める」と…

おとうちゃん大好き

一昨日、歯科医院の待合室で中央紙を読んでいたら、1面の編集日記に心が和んだ。私の子どもだったらどうだろう。さてさて、その当時の気持ちは今も…。 おとうちゃん大好き おとうちゃんはカッコイイなぁぼく おとうちゃんににてるよね大きくなるともっとにて…

shape of my Heart

He deals the cards as a meditationAnd those he plays never suspectHe doesn't play for the money he winsHe doesn't play for the respect奴は心沈めてカードを切る無心に金のためじゃない称賛がほしくてやるんじゃない He deals the cards to find the…

微光のなかの宇宙(中公文庫)

作家の司馬遼太郎さんは小学校低学年のころ、化け物の絵を描きたい衝動に駆られ、実際に空想して描いたという。上級生のときには図画に最低の点を付ける先生に紙風船を模写するように言われたのがいやで、キノコのネズミタケを描いて反抗したこともある。な…

古墳思えば病は小さい

政治学者 草野 厚さん 日本の政治や外交に鋭い論陣を張る政治学者の草野厚さん(69)。慶応大教授を退職後、これまでの研究分野を離れ、古墳のフィールドワークをする毎日だ。全国を飛び回る姿からは、四半世紀近くにわたってC型肝炎ウイルスとの闘い、肝臓…

熊をめぐる物語

随想 昨年の夏、猪苗代町のある肉屋で熊肉が売られているのを見つけた。珍しいから店の主人にどこ産の肉かを尋ねてみた。「すぐ近くの吾妻山で春に獲れたのよ。親子連れだったそうだが、子熊の方は福島市の居酒屋の主(あるじ)が引き取っていったと聞いたよ…

修羅を抜け、命問う

次男の自死、妻の破綻…宿命受け止めた 作家 柳田邦男さん 悲しみは真の人生の始まり。肉体は滅んでも魂は生き続ける―。作家の柳田邦男さん(80)は事故や災害、闘病の現場に立ち、命の意味を問い掛けてきた。年齢とともに円熟味を増すその死生観は、57歳で経…

乾為天(象伝)

象に曰く、天行(てんこう)は健なり。君子もって自強(じきょう)して息(や)まず。潜竜用うるなかれとは、陽にして下に在ればなり。見竜田に在りとは、徳の施(ほどこ)し普(あまね)きなり。終日乾乾すとは、道を反復するなり。あるいは躍りて淵に在り…

乾為天(彖伝)

彖(たん)に曰く、大いなるかな乾元(けんげん)、万物資(と)りて始(はじ)む。すなわち天を統(す)ぶ。雲行き雨施し、品物(ひんぶつ)形を流(し)く。大いに終始を明らかにし、六位(りくい)時(とき)に成る。時に六竜(りくりゅう)に乗り、もっ…

☰☰ 乾為天 けんいてん(彖辞・象辞)

乾(けん)は、元(おお)に亨(とお)りて貞(ただし)きに利(よ)ろし。初九(しょきゅう)。潜竜(せんりゅう)なり。用うるなかれ。九二(きゅうじ)。見竜(けんりゅう)田(でん)に在り。大人(たいじん)を見るに利ろし。九三(きゅうさん)。君子…

夢見ているよう

3.11あの日から はだしで家を飛び出して車に家族を押し込んだ。痛えなんて感じねえ。目の前の車乗んのも、はっていくのが精いっぱい。家族を山に避難させて港に走った。津波から船を守るには沖に出すしかねえからね。海水が渦巻いて引いていた。ただごとでね…

日常の祈り

もう一月前以上に終えた行事だが、古人の祈りの日常が伝わる内容なので掲載した。物が豊かな、便利な世の中に生きる我々だが、果たして何ものにも頼れなくなった時、古人同様、最後の最後は祈ることに尽きるだろう。祈りには力がある、そう思う。 『日本人の…

天道(てんどう)は親(しん)無(な)し。常に善人に与(くみ)す。

天道無親 常与善人(老子 道徳経第79章) 天の道、つまり神のみ心というものには、誰々に特別親しくする、というような個人的な心はなく、定められた法則の通りに働くのだから、天の道に叶った、大宇宙の法則に叶った人々に大きな力が働きかける。天の道に叶…

「無常」から明るい旋律

宗教学者 山折 哲雄やまおり てつお 金融恐慌、通貨危機、100年に一度の大暴風…。いささか大げさな言葉が、ちまたにあふれ出している。ほとんど異口同音の波に乗って、それが聞こえてくる。けれども、どうだろう。その「金融恐慌」という名の妖怪の本質は、…

ほめれば成犬も変化 名前でしからない

家族としての犬のしつけ3 今から20年ほど前、うちの動物病院にはステファンという雑種犬がいた。子犬時代に雨に打たれて倒れているところを、小学生に抱えられてやってきた。新しい家族が見つからず、当院で生活するようになった。われ関せずの性格で、なん…

餌やりに矛盾 なぜハクチョウ

「みんなのひろば」にも、ハクチョウへの餌やりが禁止され「かわいそう」「人間は身勝手だ」と嘆く意見が掲載されています。わたしの周りでも同じくハクチョウを思いやる意見を聞くことがありましたが、私は逆にその反応に首をかしげてしまいます。まず、な…

時代性より世代性重視

芥川賞受賞者に聞く 契約社員としてつつましい生活を送る29歳の独身女性を描いた津村記久子さん(30)の小説「ポトスライムの舟」が芥川賞に決まった。働きながら執筆を続ける津村さんは「大きな望みやお金が無くても楽しく生きていけると訴えたかった」と語…

さまざまな正月

日曜論壇 毎年お寺のお正月は、檀家(だんか)さんからの年始受けやこちらからの年始廻りで慌ただしい。こちらからお邪魔するのはお寺独特の用語で「配札(はいふだ)」というのだが、要するに元朝に祈祷(きとう)した御札(おふだ)を配り歩き、各家の一年…

答えてもらえない悲しみ

随想「対話できる社会、そして優しさ」 人間は人々との対話の中に生きているのだとつくづく思う。今、失業者も就職活動をする若者たちも深い悲しみや絶望の中で「なぜ私たちは社会から必要とされていないのか?」と問い、その答えを待っているのではないだろ…

炎の記憶乗り越えて

『歩み来て、未来へ1』出兵と抑留 シベリアで死者の歌に出合った。生きてて良かったね/わたしみたいにならなくて/小屋の中で焼き殺された/屋根に逃げても弾の雨/日本人のやったこと/日本人のやったこと…1919年3月22日。ロシア革命後の内戦に乗じた「シ…

あの苦難あってこそ

『逆風に挑む ふくしまの技7 ものづくり脈々』大手に一矢報いる 創業からちょうど20年目の今年。東洋システム(いわき市)社長の庄司秀樹(47)は新年あいさつで県内外を飛び回りながら時々、忘れようにも忘れられないあの事件を思い出していた。 ■ ■「…も…

お多福のわが母

今日は母の誕生日。母に関する切り抜きを載せてみた。※以下、「情(こころ)を育(はぐく)む」(親子で読みたい教育の話)より一部引用。 話は変わりますが、以前、高校生が国語の授業で綴った一行詩「父よ母よ」が評判になりました。○母よ! あなたは嫌味…

命懸け 貫き通した愛

『地球人間模様 @LOVE』駆け落ち(アフガニスタン) 部屋を出る時、父は何も言わなかった。そっと屋根に上ると、月明かりの中、村外れの丘に懐中電灯の白い光があった。今だ。屋根を下りて夢中で光に向かって走った。懐中電灯を手に暗闇の中に立っていた…

利益よりも教育優先

『ものづくり脈々5 逆風に挑むふくしまの技』家族は仕事の原点 「専門知識を持つ君が必要なんだ」。平成4年春、日大理工学部の男子学生を朝日ラバー(さいたま市)社長の伊藤巌は熱っぽく口説いた。今は会長となり74歳の伊藤は「社長業の三分の一は人材の…

年初の便り

『水の透視画法21』こころばえと憂愁… ことしの賀状はいつもの年とずいぶんちがって、気のせいか、文面や絵がらが重く沈んでいた。何通かはおきまりの祝詞を略して「暗中模索」だの「五里霧中」だの、およそ賀状らしからぬ文言でまえおきし、「めげずにが…

葬儀日に届いた父の検体申込書

父への検体の申込書が届いたのは葬儀当日だった。近所の人に相談したら「おれたちには関係ない。家族で決めろ」とのことだった。「無駄な慣習はやめ、世のために何か尽くしたい」というのが父の遺志だった。気が動転している家族で即決できるわけがなく、父…

冬を楽しむ

随想 これから厳しい冬を迎えますが、会津の冬といえば、真っ先に雪が浮かんできます。私たち会津に住む多くの人々にとって雪は、一般的にマイナスのイメージしかありません。しかし、視点を少し変えると、雪どけ水は落葉の分解を助け、岩石層を通してミネラ…

考えさせられる寿命の不思議さ

この十月に、妹が亡くなった。姉二人と実家の兄も二年前に亡くなっているので、きょうだい七人のうち健在なのは、私と末の妹だけとなった。年齢、体調からいっても「この次は私の番かな」と思っていた。先日、ある人にその話をすると「死ぬのは病気でもなく…

人間は年齢相応に

みにくい年月のゴマカシ 絵本「100万回生きたねこ」で知られる佐野洋子さん。今年70歳となり、雑誌では再発したがんとの闘いを明らかにしている。年を重ねていくことについて寄稿してもらった。 ◇ ◇年月に逆らう生き物がいるだろうか。がんばっているのは屋…

一瞬の出会いに魂込め

地下鉄音楽家(英国) 薄汚れた地下鉄構内を秋風が吹き抜ける。ロンドンの繁華街、サウスケンジントンに夜が迫っていた。それぞれの目的地へ急ぐ大都会の人波。通路に響くクラシックギターの調べが、風の冷たさを心持ち和らげていた。「ママー!」。英国のロ…

思いやり込める上書き

『日本人の美学12』時と場所 いつどこで、どのようにのし(熨斗)袋を使うのか。のし袋は思いがけないところで必要になってきます。「のし袋の上書きは御祝、寸志、御霊前の三つだけ知っていれば恥をかくことはない」と発言した人がいてびっくりしたという…

会津の持つ精神的風土

随想 やきものと会津の風土を考えた時、まず会津における国宝の文化財をみると、湯川村・勝常寺の薬師堂に安置されている薬師如来座像、日光菩薩立像、月光菩薩立像の三体と会津美里町の龍興寺(旧会津高田町)の「一字蓮台法華経開結共」があります。このす…

魂の自由、真実求めた作家

ソルジェニーツィンを悼む 「ソルジェニーツィンのことを手紙に書く場合はSとだけ表記しよう」。これが1972年にロシアの学生の一人と取り決めた暗号だった。手紙が国境で開封されることを予測しなければならなかった旧ソ連時代、「ソルジェニーツィン」とい…

こびなければいい

画家の堀文子さんが語る「老いの哲学」② 昨年、入院いたしまして。熱でうなされていたら死に神が見えました。テナガザルのようなのが私の背中にしがみついている。絵描きなもんですから、映像人間なんでしょうね。〝死〟が形になって現れる。おもしろいです…

天安門世代が引かれた感性

評論『楊逸さんに芥川賞』 日本文化の特徴が「情」であるなら、中国は「意」と「理」の文化になろう。性格の異なる二文化の間を越境するのは簡単ではないが、原理原則にとらわれない個人の感性を奔放に筆先に任せるありかたは、楊逸(ヤンイー)さんの芥川賞…

土踏まず

芥川賞に決まって 暑い夜だった。受賞の知らせを受けたときにその暑さで眩暈(めまい)し、電話を持つ手も震えた。日本に来て21年、人生の約半分の歳月がこの海に包まれた国の風に吹かれていった。しかしその瞬間、風のように跡形もなく消え去ったはずの歳月…

アジサイと回想

『水の透視画法』生きるに値する条件 むしむしする。シャツが肌にへばりつく。こんな状態のことを、お粥(かゆ)につかったみたいに…とかなんとか形容した人がいた。うまいことをいうものだ。でも、だれがいったのであったか。のどもとまででかかっているの…

大統領令 差し止め命じた判事

弱者に寄り添う人権派 【ロサンゼルス共同】米西部ワシントン州シアトルの連邦地裁でイスラム圏7カ国からの入国を禁じる大統領令の一時差し止めを命じ、一躍「時の人」となったジェームズ・ロバート判事(69)は、難民や障害のある子ども、黒人ら社会的弱者…

明日はまた新しい自分を作り上げる

若い世代へ励まし 酒井大阿闍梨が講演 比叡山の荒行「千日回峰行」を二度達成した酒井雄哉大阿闍梨(あじゃり)が大阪市内のホテルで「みのり」をテーマに講演。自身の体験談を交え「環境が変わると、人はよい方向に変わる」と若い世代に励ましの言葉を贈っ…

大切な庭の仲間

『オーガニックガーデンのすすめ』6 梅雨のひと雨ごとに、ぐいぐいと成長する草木。目を凝らせばこの時期、葉の裏に、枝の陰に、いろいろな虫がやって来る。虫を嫌う人は多いが、虫を知ることはオーガニックガーデンづくりの第一歩。人間以外の生き物の声が…

夢野久作の歌といま

『水の透視画法8』幻夢かすめる通り魔 「殺すくらゐ 何でもない/と思ひつゝ人ごみの中を/闊歩(かっぽ)して行く」。高校の授業中に、こんな歌がのった本を教科書の下にかくして、どきどきしながら読みふけったことがある。「何者か殺し度(た)い気持ち…

爺様支える老猫

『動物病院の四季6』ヒゲ獣医師の診療日誌 夏の最後を焼き尽くす太陽が朝からまぶしい。爺様(じいさま)がオンボロ自転車をキーコ、キーコと鳴らしてやって来る。老猫のタマは、荷台にくくり付けた段ボール箱から悠々と顔だけを出し、逃げようともしない。…

青い炎

『水の透視画法7』サテンの手とことばと 月に二、三度とはいえ、もう一年も家にきてもらっているというのに、この人にはいまひとつえたいの知れないものを感じてしまう。駅のむこうから1.5㌔ほどの道のりを、体操着姿の彼はバッグ片手にすたこらかけ足でく…

中身は〝母の愛〟

宅配扱い丁寧に 「みんなのひろば」に「心も送る宅配便 手荒な扱い残念」という投稿が掲載されていました。本当にそう思います。娘が転勤先に住んでいた時のこと。正月の餅やこしあんなどを宅配便で送りました。しかし、届かないと言うのです。宅配業者に問…

恥じを知れ

恥(は)ずること無(な)かる可(べ)からず人不可以無恥『孟子』※平成20年6月2日地元朝刊「金言名言」より。 孟子曰人不可以無恥無恥之恥無恥矣 孟子曰(い)わく人は以(もって)恥ずること無かる可からず恥ずること無きを之(これ)恥ずれば、恥無し 人…

節句

『日本人の美学5』 わが国には昔から五節句を祝う行事があります。近ごろではこの行事を考え違いしている人が多いようです。節句は一年間に五回あります。一月一日「正月」、三月三日「ひな祭り」、五月五日「端午」、七月七日「七夕」、九月九日「重陽」。…

プレカリアートの憂愁

『水の透視画法6』袋小路の疲れと屈折 皮膚からみずみずしさが消え、顔がいやに骨ばって、濃くくまどったようになっている。眼(め)はこころなしか黄色くかわき、よれた疲労感をただよわせていた。大学で客員教授をしていたときの教え子と四年半ぶりに会っ…

医師の嘆き 自業自得

『医療漂流5』萎縮の現場から ※平成20年4月25日地元朝刊より。 神奈川県大和市にある大和成和病院は、中規模ながら心臓血管外科の分野で高い専門性を持つ医療機関として知られる。院長の南淵明宏医師(50)が手掛ける心臓外科手術は年に200例近く。国内で突…