朴念仁の戯言

弁膜症を経て

一瞬の出会い

昼休みの束の間、パソコンを通してイヤホンから流れるピアノのメロディーを子守唄に、椅子の背もたれに身を預けて瞼を閉じようとした時、視界に人影が入った。 顔を起こすと、白髪で短髪頭の、60過ぎの男の姿が目に入った。 イヤホンを耳から外し、すぐに立…

根無し草

20代から40代までは地に足着かぬ生き方だった。 今50代になって昔を振り返ると、ようやく大地に足が着き始めた、そんな風に思える。 植物は、母なる大地があって根を伸ばし、父なる太陽があって茎、葉、枝を伸ばす。 根無し草の私は、大地なる母、太陽なる母…

デジタルの阿弥陀クジ

聞こえづらい〝人の声〟 最近はテレビもデジタル化され、生活のすべてがデジタル化される時代がやってきつつあるが、ご承知のようにデジタルとは音も映像も「1」と「0」の記号の組み合わせで出来た疑似自然であり〝生(なま)〟の情報ではない。 そういっ…

本当に汚いものは何?

オーガニックガーデンのすすめ 16 人間は自然の恵みで生かされている。では、人間が自然にお返しできることって、何だろう。 それに答えてくれるのが、写真家で「糞土(ふんど)研究会」の代表、伊沢正名さん。伊沢さんは「人間ができるお返しは、うんこをす…

世界の先住民族の叡智を見習う⑤

韓国の初代文化大臣を勤めたイ・オリョン氏は、日本文化は、物事を小さくして、豊かな生活ができる仕組みを作り出した世界でも珍しい文化だと述べています。私は二年前、千玄室氏にお目にかかり、「茶道とは何ですか」と率直にお聞きしましたら、「一杯の抹…

世界の先住民族の叡智を見習う④

最後に、アメリカインディアンですが、150以上の部族があるといわれており、彼らにも他の先住民族同様、土地を所有するという概念がありません。アメリカ西海岸に住んでいたある部族が、移住してきた人々に土地を譲るように言われたとき、酋長は全く理解でき…

世界の先住民族の叡智を見習う③

次には、スカンディナビア半島北部の北極圏に広がるラップランドに住むサーミ族ですが、祖先は1万年くらい前に南からトナカイを追って来たといわれております。彼らは、トナカイの移動と共に一緒に遊牧していましたが、現在では定住し、遊牧している人々はい…

世界の先住民族の叡智を見習う②

最初に、ニュージーランドに住むマオリ族ですが、1000年程前に、太平洋のどこからか渡ってきた民族といわれています。18世紀にイギリス人がニュージーランドに到来し、かなり迫害されましたが、最近は力を取り戻しつつ、神から与えられた土地を守り、神々の…

がん闘病 走る喜び変化

膝の痛みも「うれしい」 プロランニングコーチ 金 哲彦(きん てつひこ)さん マラソン選手として現役時代に2時間11分台の記録を持つプロランニングコーチの金哲彦さん(53)には、生涯忘れられないレースがある。2007年7月、オーストラリアのゴールドコース…

世界の先住民族の叡智を見習う①

東京大学名誉教授 月尾 嘉男さん 地球の環境問題は憂慮すべき状態になっております。その原因は三つあると思われます。一つは、ある特定の信条を信じるかどうかで人間を判断し、世界を征服してきた「一神教」という宗教です。二つ目は、17世紀以来、「西洋科…

善人なおもて往生す、いわんや悪人をや

母が鼠径ヘルニアの手術で入院した。 手術日は5月16日だった。 妹は前日から母に付きっきりで、朝は病院で朝食が出る前から病室に出張り、夜は母が夕食を食べ終わるのを見届けてから家路に着いた。 その間、細やかな配慮は休むことがない。 妹のその姿から献…

南極と犬

歩み来て、未来へ 12 観測に貢献、危険察知 10㍍先に2匹の犬がいた。毛が伸び、子グマのように丸くなっているが、確かに置き去りにした犬だった。近寄って来ない。こちらも足を踏み出せなかった。 1956年の第一次南極地域観測隊で犬ぞり係だった九州大名誉教…

とてつもない巨人、利休

直木賞に決まって 山本 兼一 このたび、「利休にたずねよ」という作品で、第140回の直木賞をいただくことに決まった。まことに光栄なことだと感謝している。 歴史小説を書くにあたって、わたしは、できるだけ綿密な取材をすることを信条としてきた。 松本清…

若いころ下向いてた

老いの哲学⑧ 俳人宇多喜代子(うだきよこ)さんが語る 私が直接、俳句習った桂信子いう人に「一本の白髪おそろし冬の鵙(もず)」いう句があるけど、老いは不意打ちに来ますわね。じわじわ来るようである日、突然。こないだも私の後ろ姿を写真に撮った人がお…

人間弾圧の象徴、復元を

歩み来て、未来へ ハンセン病重監房 足元にある食事の差し入れ口から骨と皮だけの手が突き出ていた。それが右に左に泳ぐ。しゃがんで声をかけた。「飯だよ。早く引っ込めて」。「あぁ?」。独房から男の声がして、一瞬、手の動きが止まった。だが、また宙を…

尺蠖(せきかく)の屈するは

尺蠖之屈、以求信也 『易経』 全体は「尺蠖の屈するは、以(もっ)て信(の)びんことを求むるなり」。尺蠖は、尺取り虫。信は伸と同じ意味で、のびる。尺取り虫が体を曲げるのは、伸ばそうとしてのことである、との意。尺取り虫が身を屈するのと同じく、人…

命(めい)を知る者は天を怨まず

知命者不怨天、知己者不怨人 『説苑(ぜいえん)』 後半は「己(おのれ)を知る者は人を怨まず」。命(めい)は、天が定めためぐり合わせ。天命。天命を知る者は、何事も天の定めたことで、人の力ではどうにもならないことだからだと考え、天を怨まない。自…

稀勢、執念の変化

検証 春場所逆転V 26日終了の大相撲春場所(エディオンアリーナ大阪)で、新横綱稀勢の里の劇的な逆転優勝がファンの感動を呼んだ。13日目に左上腕部を負傷しながら強行出場し、千秋楽に本割、決定戦で奇跡の2連勝。背景などを検証した。休場危機に陥った13…

「私の肝臓をあげます」

いのちのコンパス 生体移植という選択余命3カ月の父助けたい 付き合って7年の彼は心配しないかな。そんなことを考える前に、川野祥子さん(28)の口は動いていた。「私の肝臓を、父にあげます」 2006年4月、父の弘さん(55)に付き添って鹿児島県内の病院を…

見えない力

「これで終わったな」14日目の鶴竜戦で力なく土俵を割った姿にそう思った。大方の国民もそう思っただろう。稀勢の里の優勝は消えたと。13日目の日馬富士戦で手痛い一敗を喫した上に致命的な怪我を被(こうむ)った。痛みでその場を動くこともできずに顔…

偏見に立ち向かう

植物の受精の講義をしたら、少女たちの前で性の話をしたようにすり替えられ、博物館長のいすを失ったのはフランスの昆虫学者ファーブルだ。1823年貧しい農家に生まれ、独学で教員免許を取得、教育界で力を付けてきたのを快く思わない師範学校出身者らが仕組…

社会性が生みだした長寿

霊長類学者 山極 寿一(やまぎわ じゅいち)さんが語る 霊長類で「老い」がはっきり見て取れるのは、人間だけですから。「おばあちゃん仮説」というのがあってね。雌が「自分の繁殖をやめて娘、息子、若い世代の繁殖を手伝って、孫世代の生存価を高める」と…

おとうちゃん大好き

一昨日、歯科医院の待合室で中央紙を読んでいたら、1面の編集日記に心が和んだ。私の子どもだったらどうだろう。さてさて、その当時の気持ちは今も…。 おとうちゃん大好き おとうちゃんはカッコイイなぁぼく おとうちゃんににてるよね大きくなるともっとにて…

shape of my Heart

He deals the cards as a meditationAnd those he plays never suspectHe doesn't play for the money he winsHe doesn't play for the respect奴は心沈めてカードを切る無心に金のためじゃない称賛がほしくてやるんじゃない He deals the cards to find the…

微光のなかの宇宙(中公文庫)

作家の司馬遼太郎さんは小学校低学年のころ、化け物の絵を描きたい衝動に駆られ、実際に空想して描いたという。上級生のときには図画に最低の点を付ける先生に紙風船を模写するように言われたのがいやで、キノコのネズミタケを描いて反抗したこともある。な…

古墳思えば病は小さい

政治学者 草野 厚さん 日本の政治や外交に鋭い論陣を張る政治学者の草野厚さん(69)。慶応大教授を退職後、これまでの研究分野を離れ、古墳のフィールドワークをする毎日だ。全国を飛び回る姿からは、四半世紀近くにわたってC型肝炎ウイルスとの闘い、肝臓…

熊をめぐる物語

随想 昨年の夏、猪苗代町のある肉屋で熊肉が売られているのを見つけた。珍しいから店の主人にどこ産の肉かを尋ねてみた。「すぐ近くの吾妻山で春に獲れたのよ。親子連れだったそうだが、子熊の方は福島市の居酒屋の主(あるじ)が引き取っていったと聞いたよ…

修羅を抜け、命問う

次男の自死、妻の破綻…宿命受け止めた 作家 柳田邦男さん 悲しみは真の人生の始まり。肉体は滅んでも魂は生き続ける―。作家の柳田邦男さん(80)は事故や災害、闘病の現場に立ち、命の意味を問い掛けてきた。年齢とともに円熟味を増すその死生観は、57歳で経…

乾為天(象伝)

象に曰く、天行(てんこう)は健なり。君子もって自強(じきょう)して息(や)まず。潜竜用うるなかれとは、陽にして下に在ればなり。見竜田に在りとは、徳の施(ほどこ)し普(あまね)きなり。終日乾乾すとは、道を反復するなり。あるいは躍りて淵に在り…

乾為天(彖伝)

彖(たん)に曰く、大いなるかな乾元(けんげん)、万物資(と)りて始(はじ)む。すなわち天を統(す)ぶ。雲行き雨施し、品物(ひんぶつ)形を流(し)く。大いに終始を明らかにし、六位(りくい)時(とき)に成る。時に六竜(りくりゅう)に乗り、もっ…