朴念仁の戯言

弁膜症を経て

私の心がけ ⑥

それからの私は何事によらず、自我を捨てて素直に、人の手を感謝して貸してもらうように心がけました。まして双手のない私は、誰の器にも入れるように、一つの輪の中へ融け込むようにと、努力しました。 それは決して封建的でも、自由束縛でもありません。さ…

心の声

4人だけの男だけの職場。なぜこのメンツで仕事をしているのか、ふと考える。しゃべりたくなければ黙っていればいいし、他愛もない会話に愛想付き合いすることもない。気を遣う必要もなく気楽だが、そのせいで投げ遣りで雑な気遣いになっていることに気付く。…

血の出るような思い ⑤

私は体をかたくして、丁寧に校長先生に頭を下げました。 「私(わて)、今この土地の寄席に出ています両腕のない芸人でおますが、カナリアに字を書くことを教えてもらいました。先生、どうぞ私に字を教えておくれやす、筆は口に慣れましたが、字を知りまへん…

悲しみの涙 ④

捨て身の修行者が断崖から飛び、羅漢果(らかんか)を得た悦びと申しましょうか、私は自由に筆が動くうれしさで、胸がおどるのでありました。 さて、筆は思い通りに動く、さあ、何という字を書こう、と白紙に向かいました時、私の眼から大粒の涙が紙の上にぽ…

小鳥の教え ③

人は誰でも物質が一番先にたつように申しますが、私は物質よりも他に求めている物があるような気がしておりました。 ではそれは何である、といわれましたら、さあ、何でしょう、自分でもわかりませんが、私の心は槌(つち)の下でうちひしがれた藁のように力…

ピカピカ電気で疲れ切った並木

「ライトアップは電力の無駄遣い」に全面的に賛成です。光のページェントやら何やかんやいって、並木になんか電気をつけて喜んでいる。樹木だって夜はゆっくり休みたいはず。それなのに一晩中、ピカピカ電気をつけて「並木いじめ」をしている。並木は黙って…

内で習いが外で出る ②

それは、私が15の年の正月だったと記憶しております。私が家のご不浄から出て参りますと、そこにお義父さんが立っていました。そして私に、 「妻吉(つまきち)、お前、今年いくつになった?」 「私(わて)、15になりました」 「ふうん15にな、15の娘がご不…

使命に生きよ ①

(「堀江遊郭6人斬り」から生還して退院時のこと) 私はいよいよ今日、退院することになりました。院長さんを始め、婦長さんや、その他の先生方、看護婦さんたちに、お礼やらご挨拶に参りました。さてこの病院を出るとなれば、何となく心残りでもあり、4年ぶ…

感服する思い

生きてこそ生きてこそ咲く老いの花 佐藤良子 川柳三日坊主主宰・県川柳連盟副会長の佐藤良子先生の作品です。私事になりますが、昨年4月にがんの手術、それから半年間抗がん剤治療での入退院生活を送りました。その際いただいた見舞状に添えられた句です。「…

指し続け うつ乗り越えた

闘病つづった本が話題 先崎学 九段将棋の先崎学九段(48)は才能豊かな棋士として知られているが、2017年にうつ病を発症し、約1年間休場した。回復までの日々を赤裸々に描いた「うつ病九段」(文芸春秋)を出版、話題を呼んでいる。人気棋士はどう病気を乗り…

明治維新は緊急避難

一等国の夢 明治維新はなぜ起きたのか。そして維新という選択は、この国の在り方にどのような影響を与えたのか。日本近代史家の渡辺京二さんは、西欧列強に対するおびえが武士らを突き動かし、国家主義につながったと語る。 江戸末期の日本は幕府、朝廷、そ…

透明感のある歌

四月より五月は薔薇のくれなゐの明るむことも母との世界 相良 宏 わが坐るベッドを撫づる長き指告げ給ふ勿れ(なかれ)過ぎしことは 宏 相良宏は肺結核で1955(昭和30)年に30歳の若さで病没した。特効の抗生剤ができるまでの長い間、安静に療養する以外に手…

大仏破壊 強い衝撃

知らずしてわれも撃ちしや春闌(た)くるバーミアンの野にみ仏在(ま)さず 平成13(2001)年 皇后 複雑な人間心理の奥を詠まれた一首である。宮内庁からのこの御歌(みうた)に対するコメントには「春深いバーミアンの野に、今はもう石像のお姿がない。人間…

善良さと冷酷さ 

スズメの愛らしさは、誰もが認めるところだと思います。しかし、信じ難いような冷酷性も併せ持っていることを知っている人は少ないかもしれません。それは、ツバメに対する姿勢に象徴されます。ツバメの巣は、短工期で作られた粗雑なスズメの巣とは比べもの…

現世は一時の足留め

シカは、英世と再会して3年後の大正7年11月10日に世界的に流行したインフルエンザにかかり亡くなった。そのことを知った英世は翌年の2月に恩師小林にその思いを手紙にした。 「3年前に母と別れた時に、母はいつ死んでも心残りは多くないと申しておりました。…

かけた情は水に流せ 受けた恩は石に刻め

2才児発見、尾畠春夫さんが説くボランティアとしての心がけ 山口県周防大島町で行方不明になった2才の男児、藤本理稀(よしき)ちゃんを発見した「カリスマボランティア」として一躍、時の人となった尾畠春夫さん(78才)。 軽ワゴン車に食料や水、寝袋を積…

それでよしとする

たどり着いた「半隠居」 20代後半くらいから、隠居に憧れていた。山口瞳の「隠居志願」(新潮社)を読んだのがきっかけだ。「人生50年と思い定めて、ヤリタイコトヲヤルというのが男の一生なのではないか」 わたしは仕事よりも家事を優先したかった。なるべ…

もう死ぬから・・・耳に残る母の声

8月には5歳の時を思い出します。2歳の弟と防空壕に避難した時のことです。B29の爆弾の音、まぶしい閃光は頭に焼き付いています。それ以上に衝撃を受けたのは、家族10人を父と支えていた母が、壕の水たまりで服が濡れて泣く私に言った言葉です。「もう死ぬの…

カジノより治安の良さPRすべき

一昨年12月14日、参院本会議で「統合型リゾート施設(IR)整備推進法」、通称「カジノ法」が可決されてから、約1年半がたった。先日、「整備法」が成立した。 カジノ法については賛否両論の意見があるようだが、私は反対である。世論調査でも国民の64%が反…

自殺を見ぬふり 人ごとではない

奈良県の駅で女子高生が電車に身を投げ、自殺したニュースをテレビで見た。悲しい出来事だったが、自分には直接関係がないと思いながら過ごした。 ある日、会員制交流サイト(SNS)で女子高生が自殺するまでの動画が流れていた。彼女は自殺する様子を、自分…

楽しいはずの夏

すだれ越しに風鈴の音を聞きながらスイカを頬張る。遠い思い出がよみがえる。夏が好きなのは、店先に並び始めたスイカと深紅のイチゴのかき氷が大好きだから。しかし、久々の猛暑の夏を楽しめなくなってしまった。早朝の夏祭りの準備中、突然の高熱に意識を…

原爆の脅威訴え続ける

象徴のうた 平成という時代 かなかなの鳴くこの夕べ浦上の万灯(まんどう)すでに点(とも)らむころか 平成11(1999)年 皇后 以前にも書いたことだが、天皇皇后両陛下が、どこにあっても決して黙禱(もくとう)を欠かさない大切な日が四つある。8月6日、9…

魂は生きている 

先月の小学生からの投稿「仏壇から音が 私見守って」を読み、私も同じ体験をしたことを思い出しました。 私の母がまだ元気だった頃、私が冗談で、「お母さん、天国に行ったら私に何か示してくれない?」と言いました。亡くなった人とコンタクトを取れるのだ…

あるべき姿勢を模索

象徴のうた 平成という時代 ことなべて御身(おんみ)ひとつに負(お)い給ひうらら陽(び)のなか何思(おぼ)すらむ 平成10(1998)年 皇后 本年、平成30年の歌会始のお題は「語」であった。天皇皇后両陛下は次のような歌を詠まれた。 語りつつあしたの苑…

生き証人を懐古

戊辰戦争から150年を迎え、白河市でも様々なイベントが行われています。街には〝仁義〟の文字があちこちに見られます。仁義を胸に戦った先人たちの思いに、深い感銘を受けるばかりです。 わが家にも戊辰戦争にまつわる言い伝えが残されています。6月24日、棚…

仏壇から音が

去年、夏のある日のこと。仏壇から「ドン」と、大きな音がした。私は、何かが落ちた音だと思った。結構大きな音だったからだ。ところが、隣の部屋にいたお母さんに「今、ドンって音しなかった?」と聞いても、「何も聞こえなかったよ」と言う。私はぞっとし…

15歳になる前に

今年になって、性行為などで感染する梅毒の患者が急増しているというニュースに驚いた。国立感染症研究所によると、平成29年の患者報告数は現行の集計となった11年以降で初めて5,000人を突破したと報道された。 平成17年、福島県の10代の人工妊娠中絶率が全…

平らか成る年から

東日本大震災から8年。弁膜症の手術で再び生を与えられて6年。 朝に道を聞かば、夕べに死すとも可なり 新元号を迎える今年、ありふれた日常と思いがちな砂漠化する想いに侵食されないよう、何気ない情景、何気ない人との出会いに気付きを得よう。清らかな水…

尊厳を傷つける差別

伊波敏男著 ハンセン病を生きて 偏見や差別は人間の魂をそこなう。日本社会は長い間、ハンセン病の患者や回復者の人権を奪い、尊厳を傷つけてきた。伊波敏男(いはとしお)(1943年~)の「ハンセン病を生きて」は回復者の著者が自らの体験や若者との交流を…

東京大空襲の日 夫まさに間一髪

戦争の真っただ中でしたが、夫は旧制中学を終え、大学受験のため、伯父夫婦を頼って上京しました。食糧難の時代。宿泊するためには、食料を持参する必要がありました。それを工面するため、義母はたった一枚の銘仙の着物とコメを交換して、夫に持たせてくれ…